Q.

点字図書館ですが、当館では、視覚障害者のために、小説等の文芸作品の録音図書つくりを進めていますが、著作権の問題はありますか。

 文章の著作権  | 関連用語: 営利を目的としない上演等(1) 貸与権 点字による複製等 複製権

A.

一般的に問題はありません。

著作権法では、著作権者は複製権を有しており、原則として、著作権者の了解なしに、文芸作品を録音図書にすることはできません(第21条)。しかし、福祉の増進の観点から、点字図書館等の一定の施設については、著作権者の了解なしに、視覚障害者向けの貸し出し用に録音図書を作成することができます(第37条第3項)。また、録音図書の貸し出しについては、本来は著作権者の貸与権が働くのですが、非営利・無料の貸与について、著作権者の了解はいらないことになっています(第26条の3、第38条第4項)。

関連する質問

私は福祉ボランティアに参加していますが、私の所属している会では、視覚障害者のために小説等の文芸作品の録音図書を作り、福祉施設に寄付する事業を計画しています。このような事業について著作権の問題はありますか。
点字図書館ですが、視覚障害者のために市販の文芸書の拡大図書を作ることを考えていますが、著作権の問題はありますか。
視覚障害者等のための複製等が認められている施設では、具体的にどのようなことが著作権者の許諾なくできますか。
図書館で音楽CDや市販の録音図書を貸し出すことについて、著作権の問題はありますか。
当館では様々な映画フィルムを収集し活用しており、当館の試写室では定期的に映画の上映会を催していますが、著作権の問題はありますか。
点字図書館や点字ボランティアを組織化して、小説等を点字データに変換し、それを蓄積した上で、インターネットを通じて相互に配信するネットワーク作りを計画していますが、著作権の問題はあるでしょうか。
まだ出版していない未公表の小説にも著作権はあるのですか。
学校の普通学級に通っている視覚障害者のために、検定教科書の拡大図書を作る事業を計画しています.このような事業について著作権の問題はありますか。
公共図書館で視覚障害者のために朗読会を行うことや、録音物の作成・貸出し、ホームページへの掲載を行うことは自由にできますか。
当館では様々なおもちゃを収集し活用していますが、収集したおもちゃを展示することについて、著作権の問題はありますか。

用語の説明

営利を目的としない上演等(1)
著作権の制限規定の一つです(第38条)。複製以外の方法により著作物を利用する場合において、著作権者の了解が必要ないときの要件を定めています。著作物の利用方法に応じ次のような要件が満たされた場合は、著作権者の了解は必要ありません。

1 学校の学芸会、市民グループの発表会、公民館・図書館等での上映会など(第38条第1項)
【条件】
ア 「上演」「演奏」「口述」「上映」のいずれかであること(「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない)
イ 既に公表されている著作物であること
ウ 営利を目的としていないこと
エ 聴衆・観衆から料金等を受けないこと
オ 出演者等に報酬が支払われないこと
カ 慣行があるときは「出所の明示」が必要(第48条)

2 「非営利・無料」の場合の「放送番組の有線放送」(第38条第2項)
「難視聴解消」や「共用アンテナからマンション内への配信」など、放送を受信して同時に有線放送する場合の例外です。
【条件】
ア 営利を目的としていないこと
イ 聴衆・観衆から料金を受けないこと
貸与権
財産権としての著作権又は著作隣接権の一つで、 著作物をその複製物により公衆に「貸与」することに関する権利です(第26条の3)。

貸与には、どのような名義・方法でするかを問わず、貸与と同様の使用の権原を取得させる行為、例えば買戻特約付譲渡等も含まれます。また、貸与権は、著作物の場合、映画の著作物を除く著作物に与えられた権利ですが、映画の著作物に貸与に関する権利がないわけではなく、映画の著作物のみに与えられている頒布権(第26条)には貸与に関する権利が含まれています。実演家およびレコード製作者については、市販用の音楽CD等の録音物について、音楽CD等の販売から1年間に限り、貸与権が与えられています(1年を超えるものは報酬請求権)。したがって、例えば貸しレコード店で音楽CDが貸された場合は、著作権および著作隣接権(実演家及びレコード製作者)の貸与権が働くことになり、これらの権利者の了解なしには事業を行うことは出来ません。ただし、例えば公共図書館の本やCDの貸出しの場合のように、貸与が非営利かつ無料で行われている場合は、権利者の了解を得なくともできることとしています(第38条第4項)。
点字による複製等
著作権の制限規定の一つです(第37条)。公表された著作物について、点字による複製は著作権者の了解を得ることなく行えます(第37条第1項)。また、公表された著作物を、点字データによって、フロッピーディスク等の記録媒体に保存したり、インターネット等で送信することについても、著作権者の了解なしに行うことができます(第37条第2項)。
複製権
手書き、印刷、写真撮影、複写、録音、録画、パソコンのハードディスクやサーバーへの蓄積など、どのような方法であれ、著作物を「形のある物に再製する」(コピーする) ことに関する権利で、すべての著作物を対象とする最も基本的な権利です。「生」のものを録音・録画・筆記するようなことも含まれます(第21条)。

なお、脚本等の演劇用の著作物の場合は、それが上演・放送されたものを録音・録画することも、複製に当たります。

また、建築の著作物に関しては、その「図面」に従って建築物を作ることも、複製に当たります (建築に関する図面自体は、「図形の著作物」として保護されます)。