Q.

学校の普通学級に通っている視覚障害者のために、検定教科書の拡大図書を作る事業を計画しています.このような事業について著作権の問題はありますか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 教科用拡大図書等の作成のための複製 複製権

A.

一般に著作権者の了解は必要ありません。

著作権法上、著作権者は複製権を有していますので、本来著作権者の了解が必要ですが、社会福祉の増進の観点から、弱視の児童・生徒の学習の用に供する目的で検定教科書の拡大図書を作ることは、著作権者の了解を要しないとされています(第21条、第33条の2)。ただし、これには条件があって、[1]当該教科書の発行者への事前通知、[2]営利目的で拡大図書を頒布する場合は、文化庁長官が毎年定める額の補償金の著作権者への支払いが必要です。なお、この特例は、教科用図書(小中高校の教育の用に供される児童・生徒用の検定済又は文部科学省著作名義の図書)に限られ、一般文芸書の拡大図書の作成には適用はありません。

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用語の説明

教科用拡大図書等の作成のための複製
著作権の制限規定の一つです(第33条の2)。弱視の児童又は生徒のために、既存の検定教科書の文字や図形を拡大して、いわゆる「拡大教科書」を作成するために複製する場合の例外です。

【条件】
ア 教科書に掲載された著作物であること
イ 弱視等の児童生徒用であること
ウ 教科書の「全部」又は「相当部分」を複製する場合は、教科書発行者に通知すること。なお、「営利目的」の作成の場合は、文化庁長官が定める「補償金」を著作権者に支払うこと
エ 変形又は翻案も可
オ 「出所の明示」が必要(第48条)
複製権
手書き、印刷、写真撮影、複写、録音、録画、パソコンのハードディスクやサーバーへの蓄積など、どのような方法であれ、著作物を「形のある物に再製する」(コピーする) ことに関する権利で、すべての著作物を対象とする最も基本的な権利です。「生」のものを録音・録画・筆記するようなことも含まれます(第21条)。

なお、脚本等の演劇用の著作物の場合は、それが上演・放送されたものを録音・録画することも、複製に当たります。

また、建築の著作物に関しては、その「図面」に従って建築物を作ることも、複製に当たります (建築に関する図面自体は、「図形の著作物」として保護されます)。