Q.

私は福祉ボランティアに参加していますが、私の所属している会では、聴覚障害者のために、放送番組を録画し、それに字幕をつけた上で、その字幕付きビデオを福祉施設に寄付することを計画しています。このような事業について、著作権の問題はありますか。

 映像の著作権  | 関連用語: 著作隣接権 点字による複製等

A.

放送局、番組製作者など関係権利者の了解がないとできません。

例えばテレビドラマの利用については、番組を放送した放送局、番組を作った制作会社だけでなく、脚本、音楽、実演、レコードなどに係る著作権及び著作隣接権が原則として働いてきます。著作権法では、福祉の増進の観点から、点字による複製など一定の場合に関係権利者の了解なしに著作物を複製等の方法により利用できることになっています(第37条、第37条の2)。しかし、字幕ビデオの作成については、健常者の利用も可能等の観点から、特に例外的な取り扱いをしていません。したがって、質問の場合は、原則に戻って関係権利者の了解が必要ということになりますが、放送番組については、多くの関係権利者が関与しているところから、全ての権利者から了解を得るのは事実上困難と考えられます。なお、運用面では、現在(社福)聴力障害者情報文化センターが「字幕ビデオライブラリー共同事業」を実施しておりますが、この事業に放送局や関係の権利者団体が協力するという形で字幕ビデオの作成活用が行われているという事例があります。

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用語の説明

著作隣接権
著作物等を「伝達する者」(実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者)に付与される権利です。著作隣接権は、実演等を行った時点で「自動的」に付与されるので、登録等は不要です(無方式主義)。

こうした「伝達」は様々な形態で行われていますが、条約の規定や諸外国の著作権法では、多くの場合「実演家」「レコード製作者」「放送事業者」の三者が、著作隣接権を持つ主体とされています。しかし、日本の著作権法はこれよりも保護が厚く、「有線放送事業者」にも著作隣接権を付与しています。
点字による複製等
著作権の制限規定の一つです(第37条)。公表された著作物について、点字による複製は著作権者の了解を得ることなく行えます(第37条第1項)。また、公表された著作物を、点字データによって、フロッピーディスク等の記録媒体に保存したり、インターネット等で送信することについても、著作権者の了解なしに行うことができます(第37条第2項)。