Q.

当館では様々なおもちゃを収集し活用していますが、収集したおもちゃを展示することについて、著作権の問題はありますか。

 芸術作品の著作権  | 関連用語: 応用美術の保護 展示権 美術の著作物

A.

一般的に著作権の問題はありません。

絵画、彫刻、漫画等の美術の著作物の著作権者は、著作権の一つである展示権を有していますが、この権利はいわゆる本物の作品(原作品)の展示に関するもので、例えば、絵画を複製したポスターを展示しても権利は働きません(第25条)。したがって、質問のような場合については、仮におもちゃが美術の著作物だったとしても、一般に複製物と考えられますので、おもちゃを展示しても著作権の問題は生じないことになります。なお、著作権法では、工業デザインのような実用品の意匠については、壺、茶碗、刀剣等の一品制作の美術工芸品を除き、実用品そのものやその雛型を保護しないことにしていますので、多くのおもちゃはそもそも著作権法の保護の対象から外れているといえます(第2条第2項)。

関連する質問

当館では様々な映画フィルムを収集し活用しており、当館の試写室では定期的に映画の上映会を催していますが、著作権の問題はありますか。
美術館の学芸員ですが、当館が所蔵している作品と他の館等から借りた作品をあわせてある画家の展覧会を実施しようと考えていますが、作品の展示について、著作権の問題はありますか。
県立中央図書館ですが、高価な貴重図書を一冊購入し、他の地域の県立図書館には複製物を提供し活用してもらおうと考えていますが、著作権の問題はありますか。
私が苦労して調べたデータは、著作権で保護されますか。
美術館で、当館で所蔵している作品に、他館から借用した作品を加えて展覧会を開催したいと思いますが、著作権の問題はありますか。
点字図書館ですが、当館では、視覚障害者のために、小説等の文芸作品の録音図書つくりを進めていますが、著作権の問題はありますか。
有名な小説の初版本を図書館に展示したいのですが、著作権の問題はありますか。
図書館で、図書館資料を利用した展示会を開催したいと考えていますが、著作権の問題はないでしょうか。
故人となった著名人の手紙類を展示する場合、遺族の許可が必要ですか。
図書館で、図書館資料を利用した展示会を開催する際に、見学者が見やすいようにするために、資料を複写したものを展示することはできるでしょうか。

用語の説明

応用美術の保護
応用美術という用語は、一般に[1]装具品や壁掛け、壷のような実用品として製作される美術作品、[2]家具に施された彫刻等実用品と結合している美的な創作物、[3]染織図案等量産される実用品の模様やひな型として利用するための美術的な創作物、を指すものとして用いられています。応用美術も美的な創作物であるという点では、絵画や彫刻などの純粋美術と変わりありませんが、著作権法では、美術の著作物には、「美術工芸品を含むものとする」との規定を置き、応用美術のうち美術工芸品(壺、茶碗、刀剣等の観賞用の一品制作品)が保護の対象になることを明らかにしています(第2条第2項)。したがって、応用美術については、必ずしも著作権法による保護の範囲は明確ではありませんが、最近の判例では、美術工芸品に限らず、鑑賞的色彩の強いものについて、著作権法上の保護を認める傾向にあります。
展示権
「美術の著作物の原作品」と「未発行の写真の著作物の原作品」のみを対象として付与されている権利で、これらを公衆向けに「展示」することに関する権利です(第25条)。

原作品とは、美術の著作物にあっては、例えば、画家が描いた絵そのもののことです。 また、写真については、ネガは原作品ではなく、当該ネガから作成された写真が原作品となります。なお、鋳造品、版画、写真等については、例えば、写真の場合、オリジナルネガからは同じ写真が何枚も作成できることになりますが、これらの写真はすべて原作品(いわゆるオリジナルコピーといわれるもの)になります。

また、通常、絵画が売買されても、売主から買主へ移転するのは、物としての絵画の「所有権」だけで、「著作権」は、著作権を譲渡するという契約が行われていなければ、著作権者が引き続き持っています。

したがって、物としての絵画を購入しても、著作権者に無断で「コピー」や「展示」は原則としてできないことになりますが、「美術の著作物等の原作品の所有者による展示」については、例外が認められています(第45条)。

【例外が認められる要件】
ア 「美術」または「写真」の著作物であること
イ オリジナル(原作品)の「所有者自身」または「所有者の同意を得た者」が展示すること
ウ 美術の著作物のオリジナルを、街路・公園等や、ビルの外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合でないこと
美術の著作物
絵画、版画、彫刻、書、漫画、劇画などを総じて美術の著作物といい、著作権法では、著作物の例示の一つに挙げられています(第10条第1項)。なお、著作権法では、美術の著作物は、美術工芸品を含むものとすると定義しています(第2条第2項)。これは、美的作品は、絵画、彫刻等の鑑賞用の作品(純粋美術)と、染色図案や工業デザイン等の実用品又はそのひな形(応用美術)に分けられることから、著作権法では、応用美術のうち美術工芸品(壺、茶碗、お皿、刀剣など)が保護の対象になることを明らかにしたもので、応用美術については、必ずしも著作権法による保護の範囲は明確ではありません。しかし、判例では、例えば大量生産されたおみやげ品やTシャツのデザインなど、著作権保護を肯定した事例などもあり、美術工芸品に限らず、鑑賞的色彩の強いものであれば美術の著作物に該当するとする例が多くなっております。