図書館で、図書館資料を利用した展示会を開催したいと考えていますが、著作権の問題はないでしょうか。
文章の著作権 | 関連用語: 公表権 著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護 著作者人格権 展示権 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
一般に展示については、問題ありません。
著作権の支分権の一つに展示権(第25条)という権利がありますが、これは、美術の著作物・未発行の写真の著作物の原作品(本物のこと、写真の場合はオリジナルネガから焼いたもの)を展示する場合に働くもので、例えば書籍・雑誌の展示については、そもそも権利がありません。また、絵画・彫刻やオリジナル写真の展示であっても、所有者自らや当該所有者の了解を得ている者が行う展示であれば、著作権者の了解なしでできることになっています(第45条)。なお、日記等の未公表の著作物の場合は、著作者人格権の公表権(18条)等の問題が生じる可能性がありますので、注意が必要です。
関連する質問
用語の説明
- 公表権
- 著作者人格権の一つで、まだ公表されていない自分の著作物について、それを「公表するかしないかを決定できる権利」(無断で公表されない権利)です(第18条)。 ただし、「未公表の著作物」の「著作権 (財産権)」を譲渡した場合や、「美術の著作物の原作品」や「写真の著作物で未公表のものの原作品」を譲渡した場合などには、著作物の公表に同意したものと推定されます。
- 著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護
- 著作者人格権は著作者の死亡(法人の場合は解散)とともに消滅します(第59条)。しかし、著作者が死亡してしまうと、日記を公表したり、氏名を変えたり、内容を改変することが自由に出来てしまっては問題がありますので、著作者が死亡等により存しなくなった後であっても、仮に著作者が存しているとしたら著作者人格権の侵害となるような行為を行うことを禁じています(第60条)。なお、第60条違反について、一定の遺族は差し止め等の民事的な対抗手段が可能です(第116条)。また、罰則の適用もあります(第120条)。
- 著作者人格権
- 著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。
著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。 - 展示権
- 「美術の著作物の原作品」と「未発行の写真の著作物の原作品」のみを対象として付与されている権利で、これらを公衆向けに「展示」することに関する権利です(第25条)。
原作品とは、美術の著作物にあっては、例えば、画家が描いた絵そのもののことです。 また、写真については、ネガは原作品ではなく、当該ネガから作成された写真が原作品となります。なお、鋳造品、版画、写真等については、例えば、写真の場合、オリジナルネガからは同じ写真が何枚も作成できることになりますが、これらの写真はすべて原作品(いわゆるオリジナルコピーといわれるもの)になります。
また、通常、絵画が売買されても、売主から買主へ移転するのは、物としての絵画の「所有権」だけで、「著作権」は、著作権を譲渡するという契約が行われていなければ、著作権者が引き続き持っています。
したがって、物としての絵画を購入しても、著作権者に無断で「コピー」や「展示」は原則としてできないことになりますが、「美術の著作物等の原作品の所有者による展示」については、例外が認められています(第45条)。
【例外が認められる要件】
ア 「美術」または「写真」の著作物であること
イ オリジナル(原作品)の「所有者自身」または「所有者の同意を得た者」が展示すること
ウ 美術の著作物のオリジナルを、街路・公園等や、ビルの外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合でないこと - 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
- 著作権の制限規定の一つです(第45条)。絵画や彫刻などの美術の著作物や写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、著作権者の了解なしに、それらの作品を展覧会等で展示することができます。この規定は、所有権と著作権は別の権利ですので、作品を所有していても、著作権者の了解が得られないので、作品を展覧会等に出品できないという弊害をなくすために設けられた措置です。ただし、美術の著作物の原作品を、街路や公園などの屋外に、恒常的に設置する場合には、原則に戻って、著作権者の了解が必要です。