Q.

故人となった著名人の手紙類を展示する場合、遺族の許可が必要ですか。

 文章の著作権  | 関連用語: 公表権 著作者人格権 著作者人格権の一身専属性 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置 展示権

A.

一般的には遺族の了解を得た方がよいと考えられます。

未公表の著作物を著作者に無断で公表することは、著作者人格権の一つである公表権(第18条)の侵害になりますが、著作者人格権は著作者の死亡等により権利としては消滅します(第59条)。しかし、著作者の死後においても、生前であればその著作者人格権の侵害となるべき行為を原則として禁止し(第60条)、故人の人格的利益が犯されたときは、一定の遺族に法的措置を行う権限を与えています(第116条)。質問の場合については、例えば、故人の私生活が暴かれるような手紙が公表されることになると、故人の名誉や遺族の心情が問題になると思われ、遺族に無断で公表すると裁判になる可能性も考えられます。したがって、配偶者や子供がいる場合等は、後日の紛争を避けるためにあらかじめ遺族の了解を得ておく方がよいと思われます。なお、著作権の支分権の一つに展示権(第25条)がありますが、この権利は美術作品又は写真の展示の際に働くものであり、文章の場合は考慮する必要はありません。

関連する質問

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用語の説明

公表権
著作者人格権の一つで、まだ公表されていない自分の著作物について、それを「公表するかしないかを決定できる権利」(無断で公表されない権利)です(第18条)。 ただし、「未公表の著作物」の「著作権 (財産権)」を譲渡した場合や、「美術の著作物の原作品」や「写真の著作物で未公表のものの原作品」を譲渡した場合などには、著作物の公表に同意したものと推定されます。
著作者人格権
著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。

著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。
著作者人格権の一身専属性
「著作者人格権」は、著作者が精神的に傷つけられないようにするための権利であり、創作者としての心情を守るためのものであることから、これを譲渡したり、相続したりすることはできないこととされています (第59条)。
著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
著作者人格権及び実演家人格権は、著作者及び実演家の一身に専属する権利で、権利そのものは著作者等の死亡と同時に消滅します(第59条、第101条の2)が、著作者、実演家の死後においても、生存していたとすれば著作者人格権及び実演家人格権の侵害となるべき行為を行うことを禁じています(第60条、第101条の3)。そして、死後の人格的利益が犯された場合、一定の遺族は、違反行為の形態に応じ、差止請求(第112条)又は名誉回復等の措置(第115条)を請求できます。なお、死後の人格的利益を犯した者は、別途罰則の対象になります(第120条)。
展示権
「美術の著作物の原作品」と「未発行の写真の著作物の原作品」のみを対象として付与されている権利で、これらを公衆向けに「展示」することに関する権利です(第25条)。

原作品とは、美術の著作物にあっては、例えば、画家が描いた絵そのもののことです。 また、写真については、ネガは原作品ではなく、当該ネガから作成された写真が原作品となります。なお、鋳造品、版画、写真等については、例えば、写真の場合、オリジナルネガからは同じ写真が何枚も作成できることになりますが、これらの写真はすべて原作品(いわゆるオリジナルコピーといわれるもの)になります。

また、通常、絵画が売買されても、売主から買主へ移転するのは、物としての絵画の「所有権」だけで、「著作権」は、著作権を譲渡するという契約が行われていなければ、著作権者が引き続き持っています。

したがって、物としての絵画を購入しても、著作権者に無断で「コピー」や「展示」は原則としてできないことになりますが、「美術の著作物等の原作品の所有者による展示」については、例外が認められています(第45条)。

【例外が認められる要件】
ア 「美術」または「写真」の著作物であること
イ オリジナル(原作品)の「所有者自身」または「所有者の同意を得た者」が展示すること
ウ 美術の著作物のオリジナルを、街路・公園等や、ビルの外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合でないこと