大学の付属図書館ですが、著名な学者の遺族から資料の寄贈を受けました。その中にその学者の未公表原稿もあるのですが、調査研究の目的であれば、図書館利用者の求めに応じて、その原稿をコピーしてもよいのですか。
寄贈の際に遺族の了解を得ていなければ、改めて了解を得たほうがよいと考えられます。質問の場合は、学者の著作権は遺族が有していると考えられますし、著作者死亡後の人格的利益を保護するのは遺族ですので(第60条、第116条)、利用者の求めに応じコピーを取って渡すことと、コピーを取れる資料の中には未公表の原稿も含まれることの了解を得ておけば問題は生じません。
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用語の説明
- 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
- 著作者人格権及び実演家人格権は、著作者及び実演家の一身に専属する権利で、権利そのものは著作者等の死亡と同時に消滅します(第59条、第101条の2)が、著作者、実演家の死後においても、生存していたとすれば著作者人格権及び実演家人格権の侵害となるべき行為を行うことを禁じています(第60条、第101条の3)。そして、死後の人格的利益が犯された場合、一定の遺族は、違反行為の形態に応じ、差止請求(第112条)又は名誉回復等の措置(第115条)を請求できます。なお、死後の人格的利益を犯した者は、別途罰則の対象になります(第120条)。
- 図書館等における複製
- 著作権の制限規定の一つです(第31条)。 図書館等が利用者の求めに応じて行う所蔵資料等の複写サービス等については、厳格な条件の下に著作権を制限して、著作権者の了解を得ることなく複写等を行うことができることとしています。
【条件】
ア 国立国会図書館又は政令で定める図書館・美術館・博物館等であること
イ 「営利」を目的としない事業として行われる複製であること
ウ 複製行為の「主体」が図書館等であること
エ その図書館等が所蔵している資料を複製すること
オ 次のいずれかの場合であること
・調査研究を行う利用者の求めに応じて、既に公表されている著作物の一部分(既に次号が発行されているなど、発行後相当期間を経過した雑誌等の中の著作物については、全部でもよい)を、一人につき一部提供する場合
・所蔵資料の保存のために必要がある場合
・他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な所蔵資料(絶版等資料)の複製を提供する場合