Q.

既に亡くなった父の作品が無断で利用されていますが、損害賠償の請求はできますか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 共有著作権の行使 刑事上の対抗措置(1) 民事の対抗措置

A.

一般論としてはできると考えてください。著作権は、著作者の死後50年まで保護されますので、例えば生前に他人に著作権が譲渡されたとか、遺産分割の際に著作権があなた以外の遺族に相続されたなどの特別の事情がない限り、著作権は遺族の共有になっていると思われますので、著作権者であるあなたは、権利侵害者に対し損害賠償の請求などの民事上の請求はもちろんのこと刑事告訴もできます。なお、著作権法では、共有著作権の行使は、共有者全員の合意がなければできないことになっていますが(第65条第2項)、訴訟等の場合はあなたが単独でもできます(第117条)。

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用語の説明

共有著作権の行使
共著などの共同著作物の作者や著作権の法定相続が行われたときの遺族等は、複数の者が一つの著作権を共有していることになります。共有にかかる著作権は、権利行使の一体性の確保等を勘案し、持分の譲渡や質権の設定に関し他の共有者の同意がいること、共有者全員の合意がなければ行使することができないことになっています(第65条)。また、共有著作権の各共有者は、正当な理由がない限り、行使の同意を拒んだり、合意の成立を妨げることはできません。なお、共同著作物の著作者人格権の行使と同様に共有著作権についても、各共有者の中から代表者を選出し、著作権を代表して行使させることができます。
刑事上の対抗措置(1)
著作権等の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として,「10年以下の懲役」又は「1000万円以下の罰金」(懲役と罰金の併科も可)という罰則規定が設けられています(第119条第1号)。また、企業などの法人等による侵害(著作者人格権や実演家人格権の侵害を除く)の場合には、「3億円以下の罰金」とされています。

この他、次のような行為についても、それぞれ刑事上の罰則が定められています。

ア 営利を目的として、「公衆向けのダビング機」を設置し、音楽CDのコピーなど(著作権の侵害となること)に使用させること(第119条第2項第2号)。
→ 「5年以下の懲役」又は「500万円以下の罰金」(懲役と罰金の併科も可)(親告罪)
イ 小説などの原作者(著作者)が亡くなった後に、その小説の内容を勝手に変えてしまったり、原作者名を変えてしまうこと(第120条)。
→ 500万円以下の罰金(非親告罪)
民事の対抗措置
[1] 損害賠償請求
故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害を被った者は、侵害による損害の賠償を請求することができます(民法第709条)。侵害を被った者は損害の額を立証しなければなりませんが、その負担を軽減するために、損害額の算定方法に関する規定や、損害額推定規定、権利者が受けるべき使用料の額に相当する額を損害額として請求できることを定めた規定等が設けられています(第114条)。

[2] 差止請求
著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対して、「侵害行為の停止」を求めることができます。また、侵害のおそれがある場合には、「予防措置」を求めることができます(第112条、第116条)。

[3] 不当利得返還請求
他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害を被った者は、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には、「その利益が残っている範囲での額」を、知っていた場合には、「利益に利息を付した額」を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。
例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その行為者に故意又は過失がなくても、その出版物の売上分などの返還を請求できます。

[4] 名誉回復等の措置の請求
著作者又は実演家は、侵害者に対して、著作者等としての「名誉・声望を回復するための措置」を請求することができます(第115条、第116条)。
例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。