豊臣秀吉の日記が新たに発見されましたが、これを見ると秀吉の私生活がよくわかります。この日記を出版しても著作権の問題はないですか。
問題ないと考えられます。
財産権としての著作権については、著作者の死後50年までで消滅しますから問題ありません(第51条)。著作者人格権も著作者の生存間の権利ですから問題ありません(第59条)。問題になるとすれば、故人の人格的利益の保護の問題です。著作権法では、著作者の死亡により著作者人格権が消滅したとしても、著作者が生存していたとするならば著作者人格権の侵害になるような行為はしてはならないとしています(第60条)。例えば、未公表の日記の公表は、故人の私生活を暴くことになり、故人の名誉声望を害するという問題も生じますので、著作者人格権の一つである公表権の侵害に相当する行為として評価される可能性があります。ただし、一方で、行為の性質や程度、社会的変動等の理由により、その行為が著作者の意を害しないと認められる場合にはこの規定の適用はないとしており(第60条)、質問のように、秀吉のような歴史上の人物については、歴史的資料としての価値の方が強いと考えられるので、公表しても問題ないと考えられます。
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用語の説明
- 著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護
- 著作者人格権は著作者の死亡(法人の場合は解散)とともに消滅します(第59条)。しかし、著作者が死亡してしまうと、日記を公表したり、氏名を変えたり、内容を改変することが自由に出来てしまっては問題がありますので、著作者が死亡等により存しなくなった後であっても、仮に著作者が存しているとしたら著作者人格権の侵害となるような行為を行うことを禁じています(第60条)。なお、第60条違反について、一定の遺族は差し止め等の民事的な対抗手段が可能です(第116条)。また、罰則の適用もあります(第120条)。
- 著作者人格権の一身専属性
- 「著作者人格権」は、著作者が精神的に傷つけられないようにするための権利であり、創作者としての心情を守るためのものであることから、これを譲渡したり、相続したりすることはできないこととされています (第59条)。