図書館の書庫で、ある有名作家の日記が発見されましたが、これを利用者の求めに応じて、複写することはできるでしょうか。
文章の著作権 | 関連用語: 公表権 著作者人格権 著作者人格権の一身専属性 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
日記は、通常未公表の著作物ですから、原則として、コピーサービスはできないと考えてください。
著作権法では、図書館の機能に着目し、一定の条件の下に、著作権者の了解なしにコピーサービスができることとしています(第31条)が、この特例は、未公表の著作物には適用されません。なお、日記の公表は、著作者人格権の一つである公表権(第18条)の問題が生じますので注意が必要です。すなわち、未公表の著作物の公表は原則として著作者の同意が必要です。また、著作者が死亡すると著作者人格権は消滅しますが(第59条)、死亡しても著作者の人格的利益は保護されることになっており(第60条)、一定の遺族は必要に応じ一定の法的措置をすることが可能となっています(第116条)。日記の場合は、故人の知られたくない秘密を暴く可能性があるので、その公表には細心の注意が必要です。
関連する質問
用語の説明
- 公表権
- 著作者人格権の一つで、まだ公表されていない自分の著作物について、それを「公表するかしないかを決定できる権利」(無断で公表されない権利)です(第18条)。 ただし、「未公表の著作物」の「著作権 (財産権)」を譲渡した場合や、「美術の著作物の原作品」や「写真の著作物で未公表のものの原作品」を譲渡した場合などには、著作物の公表に同意したものと推定されます。
- 著作者人格権
- 著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。
著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。 - 著作者人格権の一身専属性
- 「著作者人格権」は、著作者が精神的に傷つけられないようにするための権利であり、創作者としての心情を守るためのものであることから、これを譲渡したり、相続したりすることはできないこととされています (第59条)。
- 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
- 著作者人格権及び実演家人格権は、著作者及び実演家の一身に専属する権利で、権利そのものは著作者等の死亡と同時に消滅します(第59条、第101条の2)が、著作者、実演家の死後においても、生存していたとすれば著作者人格権及び実演家人格権の侵害となるべき行為を行うことを禁じています(第60条、第101条の3)。そして、死後の人格的利益が犯された場合、一定の遺族は、違反行為の形態に応じ、差止請求(第112条)又は名誉回復等の措置(第115条)を請求できます。なお、死後の人格的利益を犯した者は、別途罰則の対象になります(第120条)。