Q.

非営利、無料かつ無報酬であれば、著作物を自由に演奏や上映などができるという規定が著作権法にありますが、この規定は、著作物をインターネットで送信する場合にも適用されますか。

 音楽の著作権  | 関連用語: 営利を目的としない上演等(1) 演奏 公衆送信権 口述権 上映権 上演権・演奏権 複製権

A.

インターネットで送信する場合には適用されません。

著作権法第38条では、非営利・無料・無報酬の三条件を満たしたときには、著作権者の了解なしに、著作物を「上演」、「演奏」、「上映」及び「口述」することができます。しかし、著作物をインターネットで送信する場合には、著作物がサーバーに複製されるとともに、インターネットを通じて利用者への送信(公衆送信)されることになりますが、この「複製」や「公衆送信」については、この特例の適用はなく、著作権者の了解なしにはできません。

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用語の説明

営利を目的としない上演等(1)
著作権の制限規定の一つです(第38条)。複製以外の方法により著作物を利用する場合において、著作権者の了解が必要ないときの要件を定めています。著作物の利用方法に応じ次のような要件が満たされた場合は、著作権者の了解は必要ありません。

1 学校の学芸会、市民グループの発表会、公民館・図書館等での上映会など(第38条第1項)
【条件】
ア 「上演」「演奏」「口述」「上映」のいずれかであること(「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない)
イ 既に公表されている著作物であること
ウ 営利を目的としていないこと
エ 聴衆・観衆から料金等を受けないこと
オ 出演者等に報酬が支払われないこと
カ 慣行があるときは「出所の明示」が必要(第48条)

2 「非営利・無料」の場合の「放送番組の有線放送」(第38条第2項)
「難視聴解消」や「共用アンテナからマンション内への配信」など、放送を受信して同時に有線放送する場合の例外です。
【条件】
ア 営利を目的としていないこと
イ 聴衆・観衆から料金を受けないこと
演奏
著作権法上、演奏には、音楽を楽器を用いて表現する「演奏」だけでなく、音楽を人の声音によって表現する「歌唱」が含まれることになっています(第2条第1項第16号)。

また、「演奏」には、原則として、録音されまたは録画された演奏を再生することや同一の敷地・建物内における有線設備を用いた演奏の伝達が含まれます(第2条第7項)。
公衆送信権
公衆送信権は、著作物を公衆向けに「送信」することに関する権利(第23条)であり、公衆向けであれば、無線・有線を問わず、あらゆる送信形態が対象となります。具体的には、次のような場合が含まれます。

(a) テレビ、ラジオなどの「放送」や「有線放送」
(著作物が、常に受信者の手元まで送信されているような送信形態)
(b) インターネットなどを通じた「自動公衆送信」
(受信者がアクセスした(選択した)著作物だけが、手元に送信されるような送信形態。受信者が選択した著作物を送信する装置(自動公衆送信装置=サーバーなど)の内部に著作物が蓄積される「ホームページ」のような場合と、蓄積されない「ウェブキャスト」などの場合がある)
(c) 電話などでの申込みを受けてその都度手動で送信すること
(ファックスやメールを用いるもの。サーバー等の機器によってこれを自動化したものが (b)の場合。)

上記(b)の場合、この権利は、サーバー等の「自動公衆送信装置」からの「送信」だけでなく、その前段階の行為である、「自動公衆送信装置」への「蓄積」(いわゆるアップロード)や「入力」(ウェブキャストなど蓄積を伴わない場合)などにも及びます。こうした行為により、蓄積・入力された著作物は、「受信者からのアクセス(選択)があり次第『送信』され得る」という状態に置かれるため、これらの行為は「送信可能化」と総称されています。

つまり、無断で「送信可能化」すると、まだ、受信者への送信が行われていなくても、権利侵害となるわけです。

なお、この公衆送信権は、学校内などの「同一の構内」においてのみ行われる「送信」は、プログラム以外は対象とはなりません。ただし、校内LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を使う場合は、サーバー等に「コピー」ができますので、コピーすることについて著作権者の了解を得ることが必要となります。
口述権
「言語の著作物」を、朗読などの方法により口頭で公衆に伝達することに関する権利です(第24条)。「口述」には、CDなどに録音された著作物を再生することや、著作物の口述を離れた場所にあるスピーカー等に送信して伝達することも含まれます。
上映権
著作物を、機器(映写機、パソコン、テレビ等)を用いて、公衆向けに「上映」する(スクリーンやディスプレイに映し出す)ことに関する権利です(第22条の2)。

この権利は、映画の著作物に限らず、すべての著作物が対象となりますが、「機器」を用いた場合に限定されているので、「現物を直接見せる」(例えば美術作品を展示する)という場合は含まれません。

なお、インターネットを通じて入手し、いったんパソコン内に固定されている「動画」や「静止画」をディスプレイ上に映し出して公衆に見せる行為も、上映に当たります。
上演権・演奏権
著作物を公衆(不特定又は特定多数)に対し「上演」(演劇等の場合)したり、「演奏」(音楽の場合)したりすることに関する権利です(第22条)。上演・演奏には、CDやDVDなどの「録音物・録画物を再生すること」や、著作物の上演・演奏を離れた場所にあるスピーカーやディスプレイに伝達して見せたり、聞かせたりすることも含まれます(公衆送信に該当する場合は除く)。
複製権
手書き、印刷、写真撮影、複写、録音、録画、パソコンのハードディスクやサーバーへの蓄積など、どのような方法であれ、著作物を「形のある物に再製する」(コピーする) ことに関する権利で、すべての著作物を対象とする最も基本的な権利です。「生」のものを録音・録画・筆記するようなことも含まれます(第21条)。

なお、脚本等の演劇用の著作物の場合は、それが上演・放送されたものを録音・録画することも、複製に当たります。

また、建築の著作物に関しては、その「図面」に従って建築物を作ることも、複製に当たります (建築に関する図面自体は、「図形の著作物」として保護されます)。