Q.

講演で、他人の作成した資料などをスクリーンに映写しながら説明する場合、著作権者の許諾が必要でしょうか。

 文章の著作権  | 関連用語: 引用 営利を目的としない上演等(1) 出所の明示

A.

自説を補強するために他人の著作物の利用を認めた「引用」に該当する場合(第32条)や非営利・無料・無報酬の著作物の上映(静止画の映写も上映に含まれます)(第38条第1項)に当たる場合は、著作権者の了解なしに使えますが、それ以外は一般に著作権者の了解が必要です。

講演の場合は、講師の話の補強材料に使われることが通常でしょうから、多くの場合において「引用」といえるのではないかと考えられます。「引用」に該当するには、[1]公表された著作物であること、[2]公正な慣行に合致すること、[3]報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること、[4]出典を明記すること(コピー以外はその慣行があるとき)が必要です(第32条第1項)。[2]と[3]の要件については、少なくとも自分の著作物と他人の著作物が明瞭に区分されていること、引用にいてそれなりの必然性があり、自分の著作物が主で引用する他人の著作物は従たる存在であることが必要と考えられます。講演の場合は、講師の話が中心で、他人の著作物はその補強材料に使われることが通常でしょうから、多くの場合において「引用」といえるのではないかと考えられます。

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用語の説明

引用
著作権の制限規定の一つです(第32条)。 例えば学術論文を創作する際に自説を補強等するために、自分の著作物の中に、公表された他人の著作物を掲載する行為をいいます。

引用と言えるためには、[1]引用する資料等は既に公表されているものであること、[2]「公正な慣行」に合致すること(例えば、引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になってくること。)、[3]報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること、(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること)、[4]出所の明示が必要なこと(複製以外はその慣行があるとき)(第48条)の要件を満たすことが必要です(第32条第1項)。

また、国、地方公共団体の機関、独立行政法人等が作成する「広報資料」、「調査統計資料」、「報告書」等の著作物については、[1]一般への周知を目的とした資料であること、[2]行政機関等の著作名義の下に公表した資料であること、[3]説明の材料として転載すること、[4]「転載禁止」などの表示がないこと、[5]出所の明示が必要なこと(第48条)の要件を満たした場合は、刊行物への大幅な転載が認められています(第32条第2項)。
営利を目的としない上演等(1)
著作権の制限規定の一つです(第38条)。複製以外の方法により著作物を利用する場合において、著作権者の了解が必要ないときの要件を定めています。著作物の利用方法に応じ次のような要件が満たされた場合は、著作権者の了解は必要ありません。

1 学校の学芸会、市民グループの発表会、公民館・図書館等での上映会など(第38条第1項)
【条件】
ア 「上演」「演奏」「口述」「上映」のいずれかであること(「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない)
イ 既に公表されている著作物であること
ウ 営利を目的としていないこと
エ 聴衆・観衆から料金等を受けないこと
オ 出演者等に報酬が支払われないこと
カ 慣行があるときは「出所の明示」が必要(第48条)

2 「非営利・無料」の場合の「放送番組の有線放送」(第38条第2項)
「難視聴解消」や「共用アンテナからマンション内への配信」など、放送を受信して同時に有線放送する場合の例外です。
【条件】
ア 営利を目的としていないこと
イ 聴衆・観衆から料金を受けないこと
出所の明示
引用、教科書への掲載、点字による複製は、一定の条件を満たせば著作権者の了解なしに利用することができますが、利用に当たって誰のどの著作物を利用しているのかを明らかにすることを「出所の明示」といいます(第48条)。出所の明示は、利用の態様に応じて、合理的と認められる方法及び程度により、著作物の題名、著作者名、出版社名などを明示しなければなりません。なお、利用形態によっては、その慣行があるときに出所の明示をすればよいことになっています。