Q.

大学図書館ですが、珍しい言語で書かれた論文を日本語に訳して、利用者に提供することはできるでしょうか。

 論文の著作権  | 関連用語: 図書館等における複製 翻訳・翻案等による利用 翻訳権

A.

図書館のコピーサービスを一定の条件で認めた特例(第31条第1号)に該当する場合は、翻訳して提供することができます(第43条)。

著作権の支分権の一つに翻訳権(第27条)という権利がありますので、他言語への翻訳については、本来著作権が働きますが、図書館のコピーサービスを一定の条件で認めた特例(第31条第1号)により、複製物を提供する場合は、翻訳して提供することができます。

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用語の説明

図書館等における複製
著作権の制限規定の一つです(第31条)。 図書館等が利用者の求めに応じて行う所蔵資料等の複写サービス等については、厳格な条件の下に著作権を制限して、著作権者の了解を得ることなく複写等を行うことができることとしています。

【条件】
ア 国立国会図書館又は政令で定める図書館・美術館・博物館等であること
イ 「営利」を目的としない事業として行われる複製であること
ウ 複製行為の「主体」が図書館等であること
エ その図書館等が所蔵している資料を複製すること
オ 次のいずれかの場合であること
・調査研究を行う利用者の求めに応じて、既に公表されている著作物の一部分(既に次号が発行されているなど、発行後相当期間を経過した雑誌等の中の著作物については、全部でもよい)を、一人につき一部提供する場合
・所蔵資料の保存のために必要がある場合
・他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な所蔵資料(絶版等資料)の複製を提供する場合
翻訳・翻案等による利用
著作権の制限規定により著作物の利用が認められる場合には、利用に際して以下の通り翻訳、編曲、変形、翻案が行えます。

ア 私的使用のための複製(第30条第1項)、検定教科書等への掲載(第33条第1項)、学校教育番組の作成のための複製(第34条第1項)、教育機関での複製(第35条)については、翻訳、編曲、変形、翻案
イ 図書館等における複製サービス(第31条第1項第1号若しくは第3項後段)、引用 (第32条)、試験問題としての複製(第36条)、点字および盲人用録音テープへの複製(第37条第1項若しくは第2項)、時事論説の転載等(第39条第1項)、公開演説等の報道的利用(第40条第2項)、時事の事件の報道のための利用(第41条)、司法・立法・行政目的の複製(第42条)については翻訳
ウ 教科用拡大図書等の作成のための複製(第33条の2第1項)
エ 録音図書等の製作(第37条第3項)
オ リアルタイム字幕の作成(第37条の2)については翻案、翻訳(要約に限る)
翻訳権
二次的著作物の創作権(第27条)の一つです。この権利は、ある著作物に創作性を加えて別の著作物を作る権利のことをいいますが、その行為の中で、ある言語で作成された著作物を別の言語で表現することに関する権利を翻訳権といいます。