Q.

私は以前仕事の関係でペンネームで小説を発表していましたが、今は仕事もやめ小説家として執筆に専念しています。ペンネームで発表した小説の著作権は公表後50年までしか保護されないと聞きましたが、原則的保護期間である死後起算にする方法はあるのでしょうか。

 文章の著作権  | 関連用語: 実名の登録 登録制度 無名又は変名の著作物の保護期間

A.

方法はあります。

一つは、著作権法が定める「実名の登録」という制度を利用することです(第75条)。この登録をすると、登録された者が著作者と推定され、保護期間が公表後50年までから死後50年まで延長されることになります(第52条第2項)。もう一つの方法は、改めて本名(実名)を付けて公表し直すことです(第52条第2項)。この場合も実名登録と同様に保護期間が延長されることになります。なお、以前使っていたペンネームが名前と顔が一致する程度に一般に周知されている場合は、そもそも公表後50年ではなく、死後50年まで保護されることになっています(第52条第2項)。

用語の説明

実名の登録
無名又は変名(ペンネーム等)で公表された著作物の著作者が、その実名(本名)を公示するために登録を受ける制度です(第75条第1項)。登録を受けた者は、当該著作物の著作者と推定されます(第75条第3項)。その結果、著作権の保護期間が公表後50年間から、実名で公表された著作物と同じように、著作者(登録を受けた者)の死後50年間となります。
登録制度
著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生し、その取得のためになんら手続を必要としません。この点が、登録することによって初めて権利が発生する「特許権」や「実用新案権」などと異なる点です。

著作権法上の登録制度は、権利取得のためのものではなく、著作物に係る法律事実を公示する、或いは、著作権、出版権又は著作隣接権について、権利の移転、質権の設定等の権利変動があった場合の取引の安全を確保するための制度です。

著作権法では次のような登録制度を設けています。

[1]実名の登録(著作物、第75条)
[2]第一発行(公表)年月日の登録(著作物、第76条)
[3]創作年月日の登録(プログラムの著作物、第76条の2)
[4]著作権又は著作隣接権の移転等の登録(第77条、第104条)
[5]出版権の設定等の登録(法第88条)

登録申請は、文化庁著作権課にて受け付けています。なお、プログラムの著作物については、(財)ソフトウェア情報センター(SOFTIC)にて受け付けています。
無名又は変名の著作物の保護期間
著作物の原則的保護期間は、著作者の死後50年までですが、無名又は変名(雅号、筆名、略称等)の著作物については、著作者の特定が出来ないため、公表後50年(死後50年経過が明らかであれば、その時点まで)までです(第52条)。ただし、変名の場合であっても、広く一般に周知されて名前と顔が一致するような変名の場合は原則に戻って死後50年まで保護されます。また、保護期間中に、実名の登録(第75条)が行われた場合や改めて実名で公表し直した場合についても原則に戻ります(第52条第2項)。