Q.

日本国民の著作物は、著作権条約で米国で保護されるはずですが、何年間保護されるのですか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 内国民待遇 保護期間 保護期間の相互主義

A.

基本的に米国人と同じ期間保護されます(原則として死後70年まで)。

日本と米国はどちらも著作権の基本条約であるベルヌ条約に加盟していますので、それぞれの国の著作物を自国の国民と同一又はそれを上回る条件で保護する義務があります。しかし、保護期間については、相互主義に基づくことができ、例えば我が国の場合原則的保護期間は死後50年までで、米国は死後70年までですので、条約上は米国では我が国の著作物を死後50年までしか保護しなくてもいいのですが、米国の著作権法では、自分の国より保護期間が短い国の著作物についても、米国国民の著作物と同じ期間保護することにしています。

なお、米国がベルヌ条約に加盟した1989年3月1日以前に発行された著作物や米発行の著作物については、例外がありますので、詳しいことは専門家に相談したほうが良いでしょう。

用語の説明

内国民待遇
著作権又は著作隣接権関係条約に関する保護の原則の一つで、自国民に与えている保護と同等又はそれ以上の保護を条約加盟国の国民の著作物に与えるということを内容としています。なお、著作権関係条約の内国民待遇は、国内法に規定している権利は条約に規定していなくても外国人に与えるという内容ですが、著作隣接権関係条約では、条約に規定する権利についてのみ内国民待遇を与えるという内容であり、内国民待遇の意味が少し違います。
保護期間
著作権や著作隣接権などの著作権法上の権利には一定の存続期間が定められており、この期間を「保護期間」といいます。

これは、著作者等に権利を認め保護することが大切である一方、一定期間が経過した著作物等については、その権利を消滅させることにより、社会全体の共有財産として自由に利用できるようにすべきであると考えられたためです。

[1] 「著作者人格権」及び「実演家人格権」の保護期間

「著作者人格権」等は一身専属の権利とされているため (第59条、第101条の2)、著作者等が死亡 (法人の場合は解散) すれば権利も消滅することとなります。 つまり、保護期間は著作者の「生存している期間」です。 しかし、著作者の死後 (法人の解散後) においても、原則として、著作者人格権等の侵害となるべき行為をしてはならないこととされています (第60条、第101条の3)。

[2] 「著作権及び著作隣接権(財産権)」の保護期間

ア 著作権
「著作権(財産権)」の保護期間は、著作者が著作物を創作したときに始まり、原則として著作者の生存している期間及び死後50年間です (第51条)。しかし、死後起算が出来ない又は適当でない著作物については、公表起算になっています。具体的には、無名又は変名(一般によく知られている周知の変名を除く)の著作物及び団体名義の著作物は公表後50年まで、映画の著作物は公表後70年まで保護されます(第52条、第53条、第54条)。

イ 著作隣接権(報酬請求権も含む)
実演、レコード、放送及び有線放送については、実演を行ったとき、レコードを最初に発行したとき(発行されなかったときは、固定[録音]後)、放送及び有線放送を行ったときから50年まで保護されます。

*なお、保護期間の計算は暦年計算で、死亡、公表等した年の翌年の1月1日から起算します。例えば、2005年2月1日に著作者が死亡した場合は、2005に50を加えた2055年の12月31日まで保護されるということです。
保護期間の相互主義
国際条約は内国民待遇を原則としていますが、保護期間については、相互主義が認められています。例えば、ある国が死後70年まで保護している場合、我が国は死後50年までしか保護していませんので、当該国では、我が国の著作物を死後50年まで保護すればよいということです。これは、著作物等の本国で権利が消滅しているにもかかわらず、条約国では権利が存在するという弊害を避けるための措置です。なお、我が国は保護期間の相互主義を採用していますが(第58条)、例えば米国のように保護期間の相互主義を採用していない国もあります。