Q.

美術館ですが、ある個人の美術作品収集家から現代作家の著名な作品の寄贈を受けました。寄贈を受けた時点で当館が作品の所有権を取得したことは明らかですが、その作品の著作権はどうなるのでしょうか。

 芸術作品の著作権  | 関連用語: 展示権 美術の著作物等の原作品の所有者による展示 美術の著作物等の展示に伴う複製 複製権

A.

別途著作権の譲渡契約が締結されてない限り、美術館が著作権を有しているとはいえません。

著作権と所有権は別の権利ですので、所有権の移転に伴って著作権も移転されるということはありません。なお、著作権法では、美術作品等の所有者の所有権と著作権者の展示権・複製権との関係を考慮し、所有者又はその同意を得た者が作品の展覧会をする場合は著作権者の展示権が働かないこと、また展示会をする場合に著作権者の了解なしに観覧者のための紹介・解説用の小冊子を作成することを認めています(第21条、第25条、第45条、第47条)。

関連する質問

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用語の説明

展示権
「美術の著作物の原作品」と「未発行の写真の著作物の原作品」のみを対象として付与されている権利で、これらを公衆向けに「展示」することに関する権利です(第25条)。

原作品とは、美術の著作物にあっては、例えば、画家が描いた絵そのもののことです。 また、写真については、ネガは原作品ではなく、当該ネガから作成された写真が原作品となります。なお、鋳造品、版画、写真等については、例えば、写真の場合、オリジナルネガからは同じ写真が何枚も作成できることになりますが、これらの写真はすべて原作品(いわゆるオリジナルコピーといわれるもの)になります。

また、通常、絵画が売買されても、売主から買主へ移転するのは、物としての絵画の「所有権」だけで、「著作権」は、著作権を譲渡するという契約が行われていなければ、著作権者が引き続き持っています。

したがって、物としての絵画を購入しても、著作権者に無断で「コピー」や「展示」は原則としてできないことになりますが、「美術の著作物等の原作品の所有者による展示」については、例外が認められています(第45条)。

【例外が認められる要件】
ア 「美術」または「写真」の著作物であること
イ オリジナル(原作品)の「所有者自身」または「所有者の同意を得た者」が展示すること
ウ 美術の著作物のオリジナルを、街路・公園等や、ビルの外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合でないこと
美術の著作物等の原作品の所有者による展示
著作権の制限規定の一つです(第45条)。絵画や彫刻などの美術の著作物や写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、著作権者の了解なしに、それらの作品を展覧会等で展示することができます。この規定は、所有権と著作権は別の権利ですので、作品を所有していても、著作権者の了解が得られないので、作品を展覧会等に出品できないという弊害をなくすために設けられた措置です。ただし、美術の著作物の原作品を、街路や公園などの屋外に、恒常的に設置する場合には、原則に戻って、著作権者の了解が必要です。
美術の著作物等の展示に伴う複製
著作権の制限規定の一つです(第47条)。 適法に美術の著作物や写真の著作物の原作品による展覧会を開催する者は、観覧者向けの作品紹介のためのパンフレット等(小冊子)に、展示する絵画や彫刻を掲載することができます。

もっとも、観覧者への販売用のポスターや絵はがき、また鑑賞用の図録への掲載等の場合には、著作権者の了解が必要です。
複製権
手書き、印刷、写真撮影、複写、録音、録画、パソコンのハードディスクやサーバーへの蓄積など、どのような方法であれ、著作物を「形のある物に再製する」(コピーする) ことに関する権利で、すべての著作物を対象とする最も基本的な権利です。「生」のものを録音・録画・筆記するようなことも含まれます(第21条)。

なお、脚本等の演劇用の著作物の場合は、それが上演・放送されたものを録音・録画することも、複製に当たります。

また、建築の著作物に関しては、その「図面」に従って建築物を作ることも、複製に当たります (建築に関する図面自体は、「図形の著作物」として保護されます)。