Q.

著作権者の了解を得ずに著作物が利用できる場合にはどのような例がありますか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 権利の目的とならない著作物 条約上保護義務を負わない著作物 著作権の制限 保護期間

A.

まず、国の法令、地方自治体の条例、裁判所の判決など、著作権法の保護の対象としていない著作物は自由に利用できます。次に、「私的使用のための複製」、「引用」、「学校における複製」、「試験問題としての複製」、「点字による複製」、「営利を目的としない上演・演奏・上映・口述」など自由利用が認められている場合には、それぞれ定められた条件の中で利用することができます。このほか、保護期間の切れた著作物、条約上わが国で保護の義務を負わない外国の著作物は、自由に利用できることができます。

用語の説明

権利の目的とならない著作物
次のような著作物については、その性質から著作権が及ばないこととされています(第13条)。

(イ) 憲法その他の法令(地方公共団体の条例、規則を含む。)
(ロ) 国や地方公共団体又は独立行政法人・地方独立行政法人の告示、訓令、通達など
(ハ) 裁判所の判決、決定、命令など
(ニ) (イ)から(ハ)の翻訳物や編集物(国、地方公共団体又は独立行政法人・地方独立行政法人が作成するもの)
条約上保護義務を負わない著作物
ベルヌ条約、TRIPS協定等の著作権関係条約加盟国の国民の著作物及び当該加盟国で最初に発行された著作物については、我が国で保護義務を負いますが、それ以外の著作物は我が国で保護義務を負いません。例えば、近隣の諸国でいいますと、中国、韓国、台湾、ロシア等は著作権関係条約に加盟していますので、当該加盟国(地域)の国民(住民)の著作物は我が国で保護されます。また著作権条約に加入していない国民の著作物は我が国で原則保護しないのですが、我が国で第一発行されるか、他の条約国で第一発行されれば、我が国で保護されることになります。
著作権の制限
著作物を複製、上演・演奏、公衆送信等の方法により利用する場合、その都度著作権者から了解を得ることが原則となります。

しかし、この原則をいかなる場合にも当てはめることは、文化的所産である著作物の公正で円滑な利用を妨げることとなり、ひいては、文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねません。そこで、著作権法では、一定の例外的な場合に限り、著作権者の権利を法律上制限して著作権者の了解を得ることなく、著作物を利用できることとする例外ルールを定めており、それを著作権の制限といっています。例えば、「私的使用のための複製」、「教科書等への掲載」、「図書館等における複製」、「営利を目的としない上演等」、「引用」などがあります。

ただし、こうした例外は著作権者の権利を不当に害することのないよう、また、あくまでも「例外」の措置であるので、その条件を厳格に運用する必要があります。
保護期間
著作権や著作隣接権などの著作権法上の権利には一定の存続期間が定められており、この期間を「保護期間」といいます。

これは、著作者等に権利を認め保護することが大切である一方、一定期間が経過した著作物等については、その権利を消滅させることにより、社会全体の共有財産として自由に利用できるようにすべきであると考えられたためです。

[1] 「著作者人格権」及び「実演家人格権」の保護期間

「著作者人格権」等は一身専属の権利とされているため (第59条、第101条の2)、著作者等が死亡 (法人の場合は解散) すれば権利も消滅することとなります。 つまり、保護期間は著作者の「生存している期間」です。 しかし、著作者の死後 (法人の解散後) においても、原則として、著作者人格権等の侵害となるべき行為をしてはならないこととされています (第60条、第101条の3)。

[2] 「著作権及び著作隣接権(財産権)」の保護期間

ア 著作権
「著作権(財産権)」の保護期間は、著作者が著作物を創作したときに始まり、原則として著作者の生存している期間及び死後50年間です (第51条)。しかし、死後起算が出来ない又は適当でない著作物については、公表起算になっています。具体的には、無名又は変名(一般によく知られている周知の変名を除く)の著作物及び団体名義の著作物は公表後50年まで、映画の著作物は公表後70年まで保護されます(第52条、第53条、第54条)。

イ 著作隣接権(報酬請求権も含む)
実演、レコード、放送及び有線放送については、実演を行ったとき、レコードを最初に発行したとき(発行されなかったときは、固定[録音]後)、放送及び有線放送を行ったときから50年まで保護されます。

*なお、保護期間の計算は暦年計算で、死亡、公表等した年の翌年の1月1日から起算します。例えば、2005年2月1日に著作者が死亡した場合は、2005に50を加えた2055年の12月31日まで保護されるということです。