Q.

入試問題や校内試験に、詩や論文、小説などを利用する際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 文章の著作権  | 関連用語: 試験問題としての複製等 著作者人格権 同一性保持権

A.

入学試験や校内試験の問題として、試験の目的上必要と認められる限度において、著作権者の了解なしに、公表された著作物を複製すること、又は入学試験の場合であってインターネットなどのネットワークを使って試験をする場合は、受験者へ試験問題を送信することができます(第36条)。しかし、利用に当たってはいくつかの点に注意する必要があります。例えば、著作者は、著作物の題名や内容を無断で改変されない同一性保持権(第20条)を有していますので、教育目的上必要な用字・用語の変更(例難しい漢字をひらがなに改める)、空白の個所に正しい用語を入れさせる穴埋め問題など、真にやむを得ない場合を除いて、作品を勝手に改変することはできません。また、出所の明示(出典を明記すること)の慣行がある場合には、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、著作物の題名、著作者名などを明示する必要があります。更に、市販の英語のヒアリング教材を使って多数の受験生に送信する場合のように、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、著作権者の了解なしに利用はできません。

用語の説明

試験問題としての複製等
著作権の制限規定の一つです(第36条)。著作物の複製と公衆送信について例外が定められています。

1 「入学試験」、「検定試験」などの問題として著作物を複製する場合の例外です。
【条件】
ア 既に公表されている著作物であること
イ 試験・検定の目的上必要な限度内であること(試験後にその問題を冊子に印刷、配布することは対象外)
ウ 「営利目的」の試験・検定の場合は著作権者に「補償金」を支払うこと
エ 慣行があるときは「出所の明示」が必要(第48条)

2 「入学試験」、「検定試験」などの問題(著作物)をインターネットなどで送信する場合の例外です。
【条件】
ア 既に公表されている著作物であること
イ 試験・検定の目的上必要な限度内であること(試験後にその問題をホームページなどに掲載することは、対象外)
ウ 「営利目的」の試験・検定の場合は著作権者に「補償金」を支払うこと
エ その著作物の種類や用途、送信の形態などから判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと(ヒアリング試験用のテープなど、各試験会場でそれぞれ購入することを想定して販売されているものを送信すること、誰でも回答者として参加できるような形で送信すること等は対象外)
オ 慣行があるときは「出所の明示」が必要(第48条)
著作者人格権
著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。

著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。
同一性保持権
自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で「改変」(変更・切除等)されない権利です(第20条)。

ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は除かれます。例えば、印刷機の性能の問題で色がうまく出ないとか、「歌手の歌が下手」などという場合が、これに当たります。