一般に試験問題全体は著作物(編集著作物)と考えられますが、個々の問題については、簡単な計算問題から文章問題まで様々なものがあり、著作物かどうかを一律に判断することはできません。
試験問題は、一般に複数の問題から構成されていますが、試験の目的を実現するために、どのような問題を選択するかや、どのように配列するかについて、出題者の創意工夫の認められるのが通常ですから、一般的には編集著作物(第12条)としての保護があるものと考えられます。また、個々の問題については、例えば小学校の低学年向けの算数の加減乗除の問題のようなものは、表現に出題者の創作性が表れているとは言えず著作物とはいえないものがほとんどではないかと思われます。しかしながら、例えば文章問題のようなものについては、誰が作成しても同じような表現にしかならないものはともかく、その文章自体は、言語の著作物と考えられるものが多いと思われます。
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用語の説明
- 著作物
- 「著作者の権利」によって「保護」される対象が著作物です。著作物は、著作権法では、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
と定義されています(第2条第1項第1号)。
具体的にどのようなものが著作物であるのかは、第10条に例示されています。
しかし、これらはあくまでも例示であって、著作物はこれだけに限りません。先に述べた定義にあてはまるもの、すなわち、以下の条件をすべて満たすものは、表に掲げられていないものであっても、著作物に該当することになります。定義の解釈は次のとおりです。
(a)「思想又は感情」を
(b)「創作的」に
(c)「表現したもの」であって、
(d)「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するもの
(a)の条件によって、「東京タワーの高さ:333メートル」といった「単なるデータ」など(人の思想や感情を伴わないもの)が著作物から除かれます。
(b)の条件によって、他人の作品の「模倣品」など(創作が加わっていないもの)が著作物から除かれます。また、「ありふれたもの」(誰が表現しても同じようなものになるもの)も創作性があるとはいえません。
(c)の条件によって、「アイディア」など(表現されていないもの)が著作物から除かれます(ただし、アイディアを解説した「文章」は表現されているため著作物になり得ます)。
(d)の条件によって、「工業製品」などが、著作物から除かれます。
(注) 「特許権」は「アイディア」を保護し、「著作権」は「表現」を保護しています。このため、例えば、ある「薬」の製法について特許権が付与されている場合、1) その製法に従って、その薬を「製造・販売」すること(アイディアの利用)は、特許権の侵害となり、2) その製法を書いた「論文をコピー」すること(表現の利用)は、「著作権」の侵害になります。 - 編集著作物
- 詩集、百科事典、新聞、雑誌のような「編集物」は、そこに「部品」として収録されている個々の著作物などとは別に、部品の選択又は配列に創作性があれば「全体」としても「編集著作物」として保護されます(第12条)。
なお、類似の著作物として、コンピュータで検索できる編集物のうち、部品の選択又は体系的な構成に創作性があるものを「データベースの著作物」といい(第2条第1項第10号の3、第12条の2)、編集著作物とは区別しています。