著作権の保護期間が経過していれば、有名な画家による厳粛な絵画を滑稽なものに改変してもよいのですか。
基本的にはできないと考えてください。著作者は、著作者人格権の一つである同一性保持権という権利を有しており、これにより著作者に無断で著作物を改変されないことが保証されています。しかし、この権利は著作者の生存中の権利で著作者の死亡により権利は消滅することになっていますが、著作権法では、著作者の死後であっても、著作者が生きているとすれば著作者人格権の侵害にあたるような行為を禁止しています。この禁止規定は何時までという期限がないので、著作権の保護期間が経過したかどうかは関係ありません。もっとも、時間の経過や社会的事情の変化などによって、その時代の社会が有する価値観は変化するので、改変は一切許されないということにはならないと考えられます。
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用語の説明
- 著作者人格権
- 著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。
著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。 - 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
- 著作者人格権及び実演家人格権は、著作者及び実演家の一身に専属する権利で、権利そのものは著作者等の死亡と同時に消滅します(第59条、第101条の2)が、著作者、実演家の死後においても、生存していたとすれば著作者人格権及び実演家人格権の侵害となるべき行為を行うことを禁じています(第60条、第101条の3)。そして、死後の人格的利益が犯された場合、一定の遺族は、違反行為の形態に応じ、差止請求(第112条)又は名誉回復等の措置(第115条)を請求できます。なお、死後の人格的利益を犯した者は、別途罰則の対象になります(第120条)。
- 同一性保持権
- 自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で「改変」(変更・切除等)されない権利です(第20条)。
ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は除かれます。例えば、印刷機の性能の問題で色がうまく出ないとか、「歌手の歌が下手」などという場合が、これに当たります。