引用に際し、著作者人格権に関して注意することはありますか。
著作権の汎用的な質問 | 関連用語: 引用 侵害とみなす行為 著作者人格権 同一性保持権
引用は、原則として他人の著作物を改変せずに利用するものですから、著作者人格権(同一性保持権)を侵害することはあまり考えられません。しかし、引用の仕方によって(例えば、誤訳があった場合や、断片的な引用で、著作者の主張と異なる主張をしているように受け取られる場合など)は、同一性保持権の侵害や、著作者の名誉又は声望が傷つけられたとして著作者人格権の侵害とみなす行為(第113条第5項)に該当する可能性があります。
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用語の説明
- 引用
- 著作権の制限規定の一つです(第32条)。 例えば学術論文を創作する際に自説を補強等するために、自分の著作物の中に、公表された他人の著作物を掲載する行為をいいます。
引用と言えるためには、[1]引用する資料等は既に公表されているものであること、[2]「公正な慣行」に合致すること(例えば、引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になってくること。)、[3]報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること、(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること)、[4]出所の明示が必要なこと(複製以外はその慣行があるとき)(第48条)の要件を満たすことが必要です(第32条第1項)。
また、国、地方公共団体の機関、独立行政法人等が作成する「広報資料」、「調査統計資料」、「報告書」等の著作物については、[1]一般への周知を目的とした資料であること、[2]行政機関等の著作名義の下に公表した資料であること、[3]説明の材料として転載すること、[4]「転載禁止」などの表示がないこと、[5]出所の明示が必要なこと(第48条)の要件を満たした場合は、刊行物への大幅な転載が認められています(第32条第2項)。 - 侵害とみなす行為
- 次のような行為は、直接的には著作権の侵害には該当しませんが、実質的には著作権の侵害と同等のものですので、法律によって「侵害とみなす」こととされています。
[1] 外国で作成された海賊版(権利者の了解を得ないで作成されたコピー)を国内において販売や配布する目的で「輸入」すること(第113条第1項第1号)。
[2] 海賊版を海賊版と知っていながら、「販売・配布・貸出」したりすること。販売・配布・貸与する目的で、「所持」すること、販売・配布・貸与をする旨の「申出」をすること、継続・反復して「輸出」すること、そして継続・反復して輸出する目的で「所持」することも対象となります(第113条第1項第2号)。
[3] 海賊版のコンピュータ・プログラムを会社のパソコンなどで「業務上使用」すること(使用する権原を得たときに海賊版と知っていた場合に限られます)(第113条第2項)。
[4] 著作物等に付された「権利管理情報」(「電子透かし」などにより著作物等に付されている著作物等、権利者、著作物等の利用条件などの情報)を不正に、付加、削除、変更すること。
また、権利管理情報が不正に付加等されているものを、そのことを知っていながら、販売したり送信したりすることも対象となります(第113条第3項)。
[5] 外国で販売されている国内で市販されているものと同一の市販用音楽CDなどを、輸入してはいけないことを知りつつ、国内で販売するために「輸入」し、「販売・配布」し、又はそのために「所持」すること(販売価格が安い国から輸入される音楽CDなどであること、また国内販売後7年を超えない範囲内で、政令で定める期間を経過する前に販売等されたものであること、などの要件を満たす場合に限られます)(第113条第5項)
[6] 著作者の「名誉・声望を害する方法」で、著作物を利用すること(第113条第6項) - 著作者人格権
- 著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。
著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。 - 同一性保持権
- 自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で「改変」(変更・切除等)されない権利です(第20条)。
ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は除かれます。例えば、印刷機の性能の問題で色がうまく出ないとか、「歌手の歌が下手」などという場合が、これに当たります。