Q.

既に他人に著作権を譲渡した私の作品がいかがわしいポスターに利用されていることがわかりました、私はこれに対し法的措置を行うことはできますか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 刑事上の対抗措置(1) 氏名表示権 侵害とみなす行為 著作者人格権 同一性保持権 民事の対抗措置

A.

一般的にはできると考えてください。作品の利用に当たって、著作者名が他人の名義になっていたり、内容が改変されている場合は、財産権である著作権がなくても、著作者人格権(氏名表示権(第19条)、同一性保持権(20条))の侵害になりますので、民事上及び刑事上の必要な法的措置ができます。また、著作者人格権を侵害するような行為がなかったとしても、「いかがわしいポスター」に作品が利用されているということであれば、その行為は著作者の名誉や声望を害する方法による著作物の利用に該当する可能性が高く、著作権法で定められた著作者人格権を侵害する行為とみなされると考えられるので(第113条第6項)、この場合においても、著作者人格権侵害と同様の法的措置を求めることができます。

用語の説明

刑事上の対抗措置(1)
著作権等の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として,「10年以下の懲役」又は「1000万円以下の罰金」(懲役と罰金の併科も可)という罰則規定が設けられています(第119条第1号)。また、企業などの法人等による侵害(著作者人格権や実演家人格権の侵害を除く)の場合には、「3億円以下の罰金」とされています。

この他、次のような行為についても、それぞれ刑事上の罰則が定められています。

ア 営利を目的として、「公衆向けのダビング機」を設置し、音楽CDのコピーなど(著作権の侵害となること)に使用させること(第119条第2項第2号)。
→ 「5年以下の懲役」又は「500万円以下の罰金」(懲役と罰金の併科も可)(親告罪)
イ 小説などの原作者(著作者)が亡くなった後に、その小説の内容を勝手に変えてしまったり、原作者名を変えてしまうこと(第120条)。
→ 500万円以下の罰金(非親告罪)
氏名表示権
著作者人格権又は実演家人格権の一つです(第19条、第90条の2)。

著作者人格権の場合は、自分の著作物を公表する時に、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば「実名」(本名)か「変名」(ペンネーム等)かなどを決定できる権利です(第19条)。

ただし、著作物の利用目的や態様に照らして、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、著作者名の表示を省略することができます。例えば、ホテルのロビーでBGMを流している場合に、いちいち作曲者名をアナウンスする必要はありません。

なお、実演家人格権は、平成14(2002)年の改正で創設された権利ですが、氏名表示権の内容については基本的に著作者人格権のそれと同様の権利です。
侵害とみなす行為
次のような行為は、直接的には著作権の侵害には該当しませんが、実質的には著作権の侵害と同等のものですので、法律によって「侵害とみなす」こととされています。

[1] 外国で作成された海賊版(権利者の了解を得ないで作成されたコピー)を国内において販売や配布する目的で「輸入」すること(第113条第1項第1号)。

[2] 海賊版を海賊版と知っていながら、「販売・配布・貸出」したりすること。販売・配布・貸与する目的で、「所持」すること、販売・配布・貸与をする旨の「申出」をすること、継続・反復して「輸出」すること、そして継続・反復して輸出する目的で「所持」することも対象となります(第113条第1項第2号)。

[3] 海賊版のコンピュータ・プログラムを会社のパソコンなどで「業務上使用」すること(使用する権原を得たときに海賊版と知っていた場合に限られます)(第113条第2項)。

[4] 著作物等に付された「権利管理情報」(「電子透かし」などにより著作物等に付されている著作物等、権利者、著作物等の利用条件などの情報)を不正に、付加、削除、変更すること。
また、権利管理情報が不正に付加等されているものを、そのことを知っていながら、販売したり送信したりすることも対象となります(第113条第3項)。

[5] 外国で販売されている国内で市販されているものと同一の市販用音楽CDなどを、輸入してはいけないことを知りつつ、国内で販売するために「輸入」し、「販売・配布」し、又はそのために「所持」すること(販売価格が安い国から輸入される音楽CDなどであること、また国内販売後7年を超えない範囲内で、政令で定める期間を経過する前に販売等されたものであること、などの要件を満たす場合に限られます)(第113条第5項)

[6] 著作者の「名誉・声望を害する方法」で、著作物を利用すること(第113条第6項)
著作者人格権
著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。

著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。
同一性保持権
自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で「改変」(変更・切除等)されない権利です(第20条)。

ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は除かれます。例えば、印刷機の性能の問題で色がうまく出ないとか、「歌手の歌が下手」などという場合が、これに当たります。
民事の対抗措置
[1] 損害賠償請求
故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害を被った者は、侵害による損害の賠償を請求することができます(民法第709条)。侵害を被った者は損害の額を立証しなければなりませんが、その負担を軽減するために、損害額の算定方法に関する規定や、損害額推定規定、権利者が受けるべき使用料の額に相当する額を損害額として請求できることを定めた規定等が設けられています(第114条)。

[2] 差止請求
著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対して、「侵害行為の停止」を求めることができます。また、侵害のおそれがある場合には、「予防措置」を求めることができます(第112条、第116条)。

[3] 不当利得返還請求
他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害を被った者は、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には、「その利益が残っている範囲での額」を、知っていた場合には、「利益に利息を付した額」を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。
例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その行為者に故意又は過失がなくても、その出版物の売上分などの返還を請求できます。

[4] 名誉回復等の措置の請求
著作者又は実演家は、侵害者に対して、著作者等としての「名誉・声望を回復するための措置」を請求することができます(第115条、第116条)。
例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。