Q.

月刊誌にCD-ROMが附録として付いていますが、このような月刊誌を貸し出す際には、どのような注意が必要でしょうか。

 映像の著作権  | 関連用語: 営利を目的としない上演等(1) 貸与権 頒布権

A.

CD-ROMに映画の著作物(動画等)が含まれている場合は、著作権者の了解あるいは著作権者への補償金の支払いがないとCD-ROMの貸出しはできません。

映画の著作物を除く著作物には貸与権(第26条の3)が、映画の著作物には頒布権(第26条)が与えられており、どちらの場合であっても、本来著作物の貸与には著作権が働くことになっています。しかし、前者の場合、非営利・無料の貸与は、例外的に著作権者の了解なく行え、しかも金銭の支払いを必要としません(第38条第4項)。書籍・雑誌、音楽CDなどがこれに該当し、CD-ROMであっても、内容が映画の著作物(動画等)以外のもの(例えば文書、音楽、美術・写真等の静止画)であれば、この特例の適用があります。一方、後者の場合については、非営利・無料であり、かつ[1]国又は地方公共団体が設置する視聴覚教育施設、[2]図書館法第2条第1項の図書館(公共図書館)などの一定の施設における貸し出しであれば、著作権者の了解は必要ありませんが、映像ソフトの貸出が市場に与える影響に鑑み、貸し出す際は著作権者に相当額の補償金を支払わねばならないことになっています(第38条第5項、令第2条の3))。質問の場合、公共図書館における利用ということであれば、この特例の適用がありますが、それ以外の図書館(大学図書館など)であれば、原則に戻って、著作権者の了解が必要ということになります。

用語の説明

営利を目的としない上演等(1)
著作権の制限規定の一つです(第38条)。複製以外の方法により著作物を利用する場合において、著作権者の了解が必要ないときの要件を定めています。著作物の利用方法に応じ次のような要件が満たされた場合は、著作権者の了解は必要ありません。

1 学校の学芸会、市民グループの発表会、公民館・図書館等での上映会など(第38条第1項)
【条件】
ア 「上演」「演奏」「口述」「上映」のいずれかであること(「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない)
イ 既に公表されている著作物であること
ウ 営利を目的としていないこと
エ 聴衆・観衆から料金等を受けないこと
オ 出演者等に報酬が支払われないこと
カ 慣行があるときは「出所の明示」が必要(第48条)

2 「非営利・無料」の場合の「放送番組の有線放送」(第38条第2項)
「難視聴解消」や「共用アンテナからマンション内への配信」など、放送を受信して同時に有線放送する場合の例外です。
【条件】
ア 営利を目的としていないこと
イ 聴衆・観衆から料金を受けないこと
貸与権
財産権としての著作権又は著作隣接権の一つで、 著作物をその複製物により公衆に「貸与」することに関する権利です(第26条の3)。

貸与には、どのような名義・方法でするかを問わず、貸与と同様の使用の権原を取得させる行為、例えば買戻特約付譲渡等も含まれます。また、貸与権は、著作物の場合、映画の著作物を除く著作物に与えられた権利ですが、映画の著作物に貸与に関する権利がないわけではなく、映画の著作物のみに与えられている頒布権(第26条)には貸与に関する権利が含まれています。実演家およびレコード製作者については、市販用の音楽CD等の録音物について、音楽CD等の販売から1年間に限り、貸与権が与えられています(1年を超えるものは報酬請求権)。したがって、例えば貸しレコード店で音楽CDが貸された場合は、著作権および著作隣接権(実演家及びレコード製作者)の貸与権が働くことになり、これらの権利者の了解なしには事業を行うことは出来ません。ただし、例えば公共図書館の本やCDの貸出しの場合のように、貸与が非営利かつ無料で行われている場合は、権利者の了解を得なくともできることとしています(第38条第4項)。
頒布権
「映画の著作物」(映画、アニメ、ビデオなどの「録画されている動く影像」)の場合に限り、「譲渡」と「貸与」の両方を対象とする「頒布権」という権利が付与されています(第26条)。

「頒布」とは公衆(不特定又は特定多数)向けに「譲渡」したり「貸与」したりすることですが、「映画の著作物」の「頒布権」は、譲渡・貸与する相手が公衆でない場合(特定少数である場合)であっても、公衆向けの上映を目的としている場合には、権利が及ぶ「頒布」に該当することとされています。

この「頒布権」のうち譲渡に関する部分は、「譲渡権」の場合とは異なり、「いったん適法に譲渡された後には消滅する」という規定がありませんので、適法に譲渡された後の再譲渡にも権利が及ぶことになります。しかし、この強力な権利は、ビデオなどが出現する前の「劇場用映画」の配給形態を前提としたものであり、公衆に提示することを目的としない映画の著作物のコピー(市販用ビデオ・DVDやゲームソフトの影像部分など)を譲渡することについては、いったん適法に譲渡された後には、この「頒布権」も(公衆に再譲渡することについては)消滅するという判断が示されました(平成14年4月の最高裁判決)。