Q.

音楽CD及びビデオの中古販売について、実演家の著作隣接権が働くのですか。

 音楽の著作権  | 関連用語: 実演 実演家 譲渡権 著作隣接権

A.

一般に実演家の譲渡権は働かないと考えてください。

演奏家、歌手、俳優などの実演家(著作隣接権者)は、著作隣接権の一つである譲渡権を有していますので、実演が固定された録音物や録画物を、公衆に譲渡(販売等)する場合は、本来実演家の了解が必要です。しかし、取引の安全を図るため、一旦実演家の了解を得て譲渡された録音物又は録画物については、譲渡権が消滅することになっていますので、原則として中古販売には譲渡権が及ばないことになります(第95条の2)。

用語の説明

実演
著作隣接権の保護の対象です。実演とは、「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演じること」や、「著作物以外のものを演じる場合で芸能的な性質を有するもの」のことをいいます(第2条第1項第3号)。

著作物以外のものを演じる場合で芸術的な性質を有するものとは、具体的には、奇術、曲芸、手品、物真似などのことです。なお、体操の「床運動」や、「フィギュアスケート」の演技などは、「競技」として行われるもので、「芸能」ではないので、実演ではありませんが、同じような行為でもアクロバットショーやアイススケートショーのように、「観客向けのショー」として行われるものは実演になります。
実演家
実演を行った者(俳優、舞踊家、歌手など)、実演を指揮した者又は実演を演出した者をいいます(第2条第1項第4号)。
譲渡権
著作物、実演又はレコードを公衆(不特定又は特定多数)向けに譲渡することに関する権利です(第26条の2、第95条の2、第97条の2)。

この権利が設けられたのは、主として、無断で海賊版を大量に作った侵害者が、これを全部第三者に一括して転売してしまった場合に、その第三者(海賊版作成者ではない)による販売を差し止められるようにするためです。したがって、次のような限定がかけられています。

第一に、国内又は国外を問わずいったん適法に譲渡されたものについては、権利がなくなります。例えば、店頭で売られている本やCDを買った場合、この権利は既に消滅していますので、転売は自由です。

第二に、この権利が働くのは公衆向けに譲渡する場合のみですので、「特定少数の人」へのプレゼントのような場合には、この権利は働きません。

第三に、「例外的に無断で複製できる場合」で、公衆への譲渡が当然想定されているような場合(例:教員による教材のコピー)には、譲渡についても例外とされ、無断でできることとされています。
著作隣接権
著作物等を「伝達する者」(実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者)に付与される権利です。著作隣接権は、実演等を行った時点で「自動的」に付与されるので、登録等は不要です(無方式主義)。

こうした「伝達」は様々な形態で行われていますが、条約の規定や諸外国の著作権法では、多くの場合「実演家」「レコード製作者」「放送事業者」の三者が、著作隣接権を持つ主体とされています。しかし、日本の著作権法はこれよりも保護が厚く、「有線放送事業者」にも著作隣接権を付与しています。