Q.

テレビ放送番組を録画する場合、実演家の権利は及ぶのでしょうか。

 映像の著作権  | 関連用語: 実演家の録音権・録画権 放送事業者等による一時的固定

A.

著作権法上、俳優等の実演家がどのような条件で放送番組に出演したかによって、権利が働く場合とそうでない場合とに分かれます。

実演家には録音権・録画権が付与されていますので、放送番組を録画する場合、実演家の権利が働くことが原則です(第91条第1項)。しかし、著作権法では、実演の円滑な利用を確保するため、一旦実演家が自分の演技を録音録画することに了解を与えた場合は、以後の実演の利用について一般に権利は働かないようになっています(第91条、第92条、第92条の2、第95条の2)。例えば、劇映画の場合は、俳優は一般に録音録画の了解を与えていますので、以後の利用については権利が働かないのが通常です。放送番組の場合は、劇映画の場合と異なり、実演を放送することについて実演家の了解を得た放送事業者は、その実演を放送するために、実演家の了解を得ずに録音・録画することができるという特例が設けられており(第93条または102条)、一般に放送局制作の番組については、この特例を利用して番組を制作していますので、放送番組を二次利用する場合は改めて実演家の了解をとっているのが実態です。また、一方で局制作以外の番組については、劇映画の場合と同様な考え方で番組制作が行われており、この場合は、以後の実演の利用について権利が働かないことになります。

なお、放送番組の録画については、実演家とは別に、番組製作者(著作権法上は映画製作者)、番組の中で利用される小説、脚本、音楽、美術、写真等の著作物の著作権者、レコード製作者(レコードを使っている場合)、放送を行っている放送事業者の了解も必要になります(第21条、第96条、第98条)。ただし、家庭内で視聴するために、テレビ放送番組をビデオテープ等に録画する場合については、私的使用のための複製に該当し、著作権者や実演家等の了解を得る必要はありません(第30条、第102条)。

用語の説明

実演家の録音権・録画権
実演家の録音権・録画権(第91条)の内容は、利用形態に分けて説明すると次のようになります。

(ア)生の実演
自分の「生の実演」を、ディスク、テープ、フィルムなどに録音・録画することに
関する権利です。
(イ)レコードに録音された実演
この権利は、自分の実演が「録音」されたCDなどをコピー(複製)することにも及びま
す。
したがって、音楽CDなどをコピーする場合には、「著作者」である作詞家、作曲家だけ
でなく、歌手や演奏家などの「実演家」の了解も必要となります。
(ウ)映画の著作物に録音・録画された実演
いったん実演家の了解(自らの実演が録音・録画されること)を得て、その実演を映画
の著作物に録音・録画した場合には、原則として、その実演を改めて録音・録画、放送・
有線放送又は送信可能化される(二次利用する)際には、ふたたび実演家の了解を得る
必要はありません(ただし、サントラ盤のように映画の著作物から録音物を作成する場合
は、例外的に権利が働きます)。これは劇場用映画、Vシネマその他の映像作品につい
ては、おおむねこれに該当しますが、実演を放送することについて実演家の了解を得た
放送事業者等が製作した放送番組については、その実演を放送等するために技術的に
必要である場合、録音・録画についての実演家の了解を得なくても、その実演を固定(録
音・録画)することができるという「例外」があるため、放送番組の二次利用等については
改めて実演家の了解を得ることが必要になります。
放送事業者等による一時的固定
著作権又は著作隣接権の制限規定の一つです(第44条第1項、第102条)。 放送事業者、有線放送事業者は、放送や有線放送をするために、一時的に著作物等を固定(録音・録画)をすることができます(第44条1項)。

ただし、一次的に固定したものは、政令で定める公的な記録保存所で保存を行う場合を除き、6ヶ月を超えて保存することはできません。

【一次的固定が認められる要件】
ア 「放送」「有線放送」することについて、権利者の了解を得ている場合又は例外的に「放送」「有線放送」が認められている場合であること
イ 自局の「放送」「有線放送」を行うための録音・録画であること
ウ 自局(又は「放送」の場合は「放送」することができる他局)の手段による録音・録画であること