実演家人格権はいつまで保護されるのですか。
演劇の著作権 | 関連用語: 実演家人格権 実演家人格権の一身専属性 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
実演家人格権は、実演家の生存間だけ認められた権利ですが、実演家の死後も実演家の人格的利益に関し一定の保護が図られることになっています。
人格とは、その人個人の固有のものですから、著作権法は、著作者人格権の場合と同様、実演家の一身に専属し譲渡できないと定めています(第101条の2)。この意味では、実演家人格権は、実演家の死亡とともに消滅することになりますが、だからといって実演の内容が大幅に改変されたり、実演家名の表示を勝手に変えられたりすることは問題です。このため著作権法は、実演家の人格的利益を保護するため、死後であっても、一定の条件付ながら、もし生存しているとしたならば人格権の侵害となるような行為をしてはならないと定めています(第101条の3)。人格的利益が損なわれた場合の救済ですが、遺族は、孫の代まで、侵害行為の差し止めや損害賠償などの民事的な措置を求めることができます(第116条)。また、そのような侵害行為を犯罪として罰則も定めています(第120条)。
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用語の説明
- 実演家人格権
- 実演家の人格的利益を守る権利です。平成14(2002)年の改正で追加されました。 著作者人格権は、「公表権」(第18条)、「氏名表示権」(第19条)及び「同一性保持権」(第20条)の3つの権利がありますが、実演家人格権は、「氏名表示権」(第90条の2)、「同一性保持権」(第90条の3)の2つの権利となっており、実演家には「公表権」が付与されていません。これは、実演が行われる際には、公表を前提として行われることが多いことによるものです。
ア 氏名表示権
自分の実演について、実演家名を表示するかしないか、表示するとすればその実名か変名(芸名等)かなどを決定できる権利です(第90条の2)。
ただし、実演の利用の目的及び態様に照らして、「実演家の利益を害するおそれがないとき」又は「公正な慣行に反しないとき」は、実演家名を省略することができます。例えば、BGMとして音楽を利用する場合に氏名表示を省略することが、これに当たります。
イ 同一性保持権
自分の実演について、無断で名誉声望を害するような改変をされない権利です(第90条の3)。
著作者の同一性保持権の場合は、意に反する改変のすべてについて権利が及びますが、実演家の同一性保持権は名誉声望を害するような改変のみに権利が及んでおり、侵害があった場合には、権利者である実演家が名誉声望を害されたということを立証しなければなりません。
また、実演の性質やその利用の目的・態様に照らして、「やむを得ない」と認められる場合や、「公正な慣行に反しない」場合は、除かれます。例えば、ある映画を放送する場合に、放送時間枠に適合するように再編集するようなことが、これに当たります。 - 実演家人格権の一身専属性
- 実演家は、実演家の人格的利益(精神的に「傷つけられない」こと)を保護するための実演家人格権を有していますが、この権利は、人格権という権利の性格上、実演家の一身に専属するものであり、他人に譲渡することはできません(第101条の2)。
なお、この権利は実演家の死亡と同時に消滅しますが、実演家の死亡後も原則として実演家人格権の侵害となる行為をしてはならないとされています(第101条の3)。
- 著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置
- 著作者人格権及び実演家人格権は、著作者及び実演家の一身に専属する権利で、権利そのものは著作者等の死亡と同時に消滅します(第59条、第101条の2)が、著作者、実演家の死後においても、生存していたとすれば著作者人格権及び実演家人格権の侵害となるべき行為を行うことを禁じています(第60条、第101条の3)。そして、死後の人格的利益が犯された場合、一定の遺族は、違反行為の形態に応じ、差止請求(第112条)又は名誉回復等の措置(第115条)を請求できます。なお、死後の人格的利益を犯した者は、別途罰則の対象になります(第120条)。