Q.

映画の著作物に該当するゲームソフトの中古販売には頒布権が及ばないのですか。

 ゲームの著作権  | 関連用語: 譲渡権 貸与権 頒布 頒布権

A.

一般に頒布権は及ばないと考えてください。

著作権法上、映画の著作物には、VTRやDVDなどの複製物により公衆に譲渡又は貸与すること等を内容とする頒布権が認められています(第26条)。ゲームソフトを使ったときに映し出される連続した映像は、過去の多数の判例から、一般に映画の著作物と考えられていますので、ゲームソフトにも映画の著作物の頒布権が及ぶことになります。したがって、著作権法の条文を見る限り、頒布権は、ゲームソフトの中古販売(譲渡)にも及ぶと考えられるわけですが、最高裁(H14。4.25)はこの解釈を否定し、正規の手続きを経て問屋に納入されたゲームソフトのように適法に公衆に譲渡されたものの再譲渡(中古販売)には、頒布権は及ばないと判断しました。なお、映画以外の著作物は、頒布権ではなく、貸与権と譲渡権があたえられていますが、この場合の譲渡権については、明文の規定により、一般に中古販売には譲渡権が及ばないことになっています(第26条の2)。

用語の説明

譲渡権
著作物、実演又はレコードを公衆(不特定又は特定多数)向けに譲渡することに関する権利です(第26条の2、第95条の2、第97条の2)。

この権利が設けられたのは、主として、無断で海賊版を大量に作った侵害者が、これを全部第三者に一括して転売してしまった場合に、その第三者(海賊版作成者ではない)による販売を差し止められるようにするためです。したがって、次のような限定がかけられています。

第一に、国内又は国外を問わずいったん適法に譲渡されたものについては、権利がなくなります。例えば、店頭で売られている本やCDを買った場合、この権利は既に消滅していますので、転売は自由です。

第二に、この権利が働くのは公衆向けに譲渡する場合のみですので、「特定少数の人」へのプレゼントのような場合には、この権利は働きません。

第三に、「例外的に無断で複製できる場合」で、公衆への譲渡が当然想定されているような場合(例:教員による教材のコピー)には、譲渡についても例外とされ、無断でできることとされています。
貸与権
財産権としての著作権又は著作隣接権の一つで、 著作物をその複製物により公衆に「貸与」することに関する権利です(第26条の3)。

貸与には、どのような名義・方法でするかを問わず、貸与と同様の使用の権原を取得させる行為、例えば買戻特約付譲渡等も含まれます。また、貸与権は、著作物の場合、映画の著作物を除く著作物に与えられた権利ですが、映画の著作物に貸与に関する権利がないわけではなく、映画の著作物のみに与えられている頒布権(第26条)には貸与に関する権利が含まれています。実演家およびレコード製作者については、市販用の音楽CD等の録音物について、音楽CD等の販売から1年間に限り、貸与権が与えられています(1年を超えるものは報酬請求権)。したがって、例えば貸しレコード店で音楽CDが貸された場合は、著作権および著作隣接権(実演家及びレコード製作者)の貸与権が働くことになり、これらの権利者の了解なしには事業を行うことは出来ません。ただし、例えば公共図書館の本やCDの貸出しの場合のように、貸与が非営利かつ無料で行われている場合は、権利者の了解を得なくともできることとしています(第38条第4項)。
頒布
有償であるか、無償であるかを問わず、著作物の複製物(例えば、印刷物、DVD、CDなど)を、公衆(不特定又は特定多数)に譲渡(配布、販売等)又は貸与する行為を言います(第2条第1項第19号)。なお、公衆への譲渡又は貸与ですので、例えば特定の一人に渡すことは頒布にならないことになりますが、映画の著作物については、例えば公衆に上映するために特定の一人に渡す場合であっても、例外的に頒布になります。
頒布権
「映画の著作物」(映画、アニメ、ビデオなどの「録画されている動く影像」)の場合に限り、「譲渡」と「貸与」の両方を対象とする「頒布権」という権利が付与されています(第26条)。

「頒布」とは公衆(不特定又は特定多数)向けに「譲渡」したり「貸与」したりすることですが、「映画の著作物」の「頒布権」は、譲渡・貸与する相手が公衆でない場合(特定少数である場合)であっても、公衆向けの上映を目的としている場合には、権利が及ぶ「頒布」に該当することとされています。

この「頒布権」のうち譲渡に関する部分は、「譲渡権」の場合とは異なり、「いったん適法に譲渡された後には消滅する」という規定がありませんので、適法に譲渡された後の再譲渡にも権利が及ぶことになります。しかし、この強力な権利は、ビデオなどが出現する前の「劇場用映画」の配給形態を前提としたものであり、公衆に提示することを目的としない映画の著作物のコピー(市販用ビデオ・DVDやゲームソフトの影像部分など)を譲渡することについては、いったん適法に譲渡された後には、この「頒布権」も(公衆に再譲渡することについては)消滅するという判断が示されました(平成14年4月の最高裁判決)。