Q.

ある出版社ですが、何十年も前に絶版になっている歴史資料の復刻版を出版したいのですが、どんなに努力しても著作権者が見つかりません。著作権者が見つからないときは出版をあきらめざるを得ないのでしょうか。

 著作物の出版  | 関連用語: 裁定による著作物の利用

A.

著作権者の不明等の理由により相当な努力をしても著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料に相当する金額を供託した上で、公表された著作物を利用することができます(第69条)。

この制度は、一種の強制許諾制度で、文化庁長官が著作権者に代わって許諾することになりますので、その手続きについては厳格に定められています。詳細は文化庁著作権課にお問い合わせください。

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用語の説明

裁定による著作物の利用
著作権者の意向に関わりなく、公益上の見地から、文化庁長官が著作権者に代わって、許諾を与えて著作物の利用を認める制度として、著作権法では「裁定制度」を置いています。

国際的には、強制許諾(compulsory licence)と呼ばれている制度です。我が国では、次の3つの場合について、文化庁長官への裁定の申請の途が開かれています。

(1)著作権者が不明である場合
相当な努力をしても「誰が権利者(著作権者、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者)なのか」ということが不明な場合や、権利者の居場所が不明で契約のための交渉ができない場合には、文化庁長官の「裁定」を受け、通常の使用料に相当する「補償金」を供託することによって、著作物を利用する道が開かれています。また、「裁定」の申請をした者は、文化庁長官の定める「担保金」を供託することによって、その申請中、暫定的な著作物の利用を行うことも可能となっています(第67条、第67条の2
、第103条)。

(2)放送のための利用
著作物を放送したいときに、著作権者との契約交渉がうまくいかない場合には、文化庁長官の「裁定」を受け、通常の使用料に相当する「補償金」を著作権者に支払うことによって、著作物を利用する道が開かれています(第68条)。

(3)レコードの製作・販売のための利用
発売の日から3年を経過した市販レコード(音楽CDなど)に録音されている音楽を、他の市販レコードに録音して販売したいときに、著作権者との契約交渉がうまくいかない場合には、文化庁長官の「裁定」を受け、通常の使用料に相当する「補償金」を著作権者に支払うことによって、著作物を利用する道が開かれています(第69条)。