Q.

私の書いた推理小説が私に無断で英語に翻訳され出版されています。これは私の著作権の侵害だと思うのですがどうですか。

 文章の著作権  | 関連用語: 譲渡権 二次的著作物 二次的著作物の創作権 二次的著作物の利用権 翻訳権

A.

一般に著作権侵害と考えられます。

小説家(著作権者)は、翻訳権を有しておりますので、原則として小説家の了解なしに翻訳することはできません(第27条)。また、出来上がった翻訳物は、翻訳の了解があるかどうかにかかわらず、元の小説の二次的著作物に該当するので、小説家は翻訳者が有している翻訳物の出版に関する権利(この場合、複製権および譲渡権)と同様の権利を持つことになります(第28条)。したがって、質問の場合は、無断で翻訳したこと、その翻訳物を無断で出版したことが著作権侵害になることになります。

用語の説明

譲渡権
著作物、実演又はレコードを公衆(不特定又は特定多数)向けに譲渡することに関する権利です(第26条の2、第95条の2、第97条の2)。

この権利が設けられたのは、主として、無断で海賊版を大量に作った侵害者が、これを全部第三者に一括して転売してしまった場合に、その第三者(海賊版作成者ではない)による販売を差し止められるようにするためです。したがって、次のような限定がかけられています。

第一に、国内又は国外を問わずいったん適法に譲渡されたものについては、権利がなくなります。例えば、店頭で売られている本やCDを買った場合、この権利は既に消滅していますので、転売は自由です。

第二に、この権利が働くのは公衆向けに譲渡する場合のみですので、「特定少数の人」へのプレゼントのような場合には、この権利は働きません。

第三に、「例外的に無断で複製できる場合」で、公衆への譲渡が当然想定されているような場合(例:教員による教材のコピー)には、譲渡についても例外とされ、無断でできることとされています。
二次的著作物
ある外国の小説を日本語に「翻訳」した場合のように、一つの著作物を「原作」とし、新たな創作性を加えて創られたものは、原作となった著作物とは別の著作物として保護されます(「翻訳」などをした人が著作者)。このような著作物は、「二次的著作物」と呼ばれています。小説を「映画化」したもの、既存の楽曲を「編曲」したものなども、このような二次的著作物です(第2条第1項第11号、第11条)。この権利を、一般に二次的著作物の創作権(第27条)と呼んでいますが、具体的には翻訳権、編曲権、変形権(例えば平面的な著作物を立体的な著作物にする)、翻案権(脚色、映画化等)からなります。

なお、この二次的著作物を利用する場合は、二次的著作物の創作者である翻訳者、編曲者等の了解を得る必要があることはいうまでもありませんが、原作の著作者についても了解が必要で、一般にこれを二次的著作物の利用権(第28条)と呼んでいます。
二次的著作物の創作権
ある著作物(原著作物)を、翻訳したり、編曲したり、映画化したり、表現形式を変更したりする等して創作された著作物を二次的著作物と呼びます(第2条第1項第11号)。このように二次的著作物を創作する権利のことを、二次的著作物の創作権(第27条)といい、原作の著作権者の了解がないと二次的著作物は作れないことになっています。なお、この権利は、翻訳権、編曲権、変形権(例えば平面的な著作物を立体的な著作物にすること)、翻案権(脚色化、映画化等)からなっています。
二次的著作物の利用権
ある著作物(原著作物)を、翻訳したり、編曲したり、映画化したり、表現形式を変更したりする等して創作された著作物を二次的著作物と呼びます(第2条第1項第11号)。

二次的著作物については、これを創作した者が有する権利(著作権)と同一の権利を、原著作物の著作権者も有することになり、これを一般に二次的著作物の利用権と呼んでいます(第28条)。具体的には、日本語で書かれた小説を英語に翻訳し、それを出版する場合は、翻訳者の了解だけでなく、原作者の了解も必要であるということです。
翻訳権
二次的著作物の創作権(第27条)の一つです。この権利は、ある著作物に創作性を加えて別の著作物を作る権利のことをいいますが、その行為の中で、ある言語で作成された著作物を別の言語で表現することに関する権利を翻訳権といいます。