Q.

私の父は小説家ですが、先月急死しました。父の小説の著作権はどうなるのでしょうか。

 文章の著作権  | 関連用語: 相続人の不存在の場合等における著作権の消滅 著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護 著作者人格権の一身専属性

A.

財産権としての著作権は、原則として著作者の死後50年間保護されますので、父上が亡くなっても著作権は消滅はしませんが(第51条)、著作者人格権は、著作者に一身に専属する権利ですので、著作者の死亡により権利としてはなくなります(第59条)。

財産権としての著作権は、他の相続財産と同様で、遺言や相続人の協議で誰かに集中して相続させたり、財産を分割して相続させることも可能です。また、財産の帰属について特別な取り決め等をしなかった場合は、民法の規定に基づいて、配偶者や子などに法定相続されますが、この場合、法定相続人が複数いるときは、著作権は相続人全員の共有になります。なお、相続人不存在で著作権が国庫に帰属する場合は、著作権が消滅することになっています(第62条)。

また、著作者の死亡により、著作者人格権は消滅することになりますが、著作者が死亡したからといって、未公表の著作物を公表したり、著作者の氏名や著作物の内容を勝手に変えたりはできず、著作者人格権の内容に抵触するような一定の行為が行われた場合は、一定の遺族が差し止め等の民事訴訟を提起したり、罰則が適用されることになっています(第60条、第116条、第120条)。

用語の説明

相続人の不存在の場合等における著作権の消滅
相続人不存在等の場合のように相続財産の帰属先が存在しないときは、民法の定めによって、国に財産が帰属することになりますが、著作権については、国に権利を帰属させるより、社会の公有にしてその自由な利用に委ねるほうが文化の発展に寄与することとなるため、消滅させることになっています(第62条第1項)。

ただし、著作権が共有に係る場合、共有者の一人が相続人なくして死亡した場合には、民法第264条による同法第255条の準用によって、その著作権の持分は他の共有者に帰属することになるため消滅することはありません(法人の解散の場合についても同様)。

また、映画の著作権が消滅する場合には、その映画の原著作物である小説、シナリオ等の著作権もその映画の利用に関する限りにおいては消滅することとされています(第62条第2項)。
著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護
著作者人格権は著作者の死亡(法人の場合は解散)とともに消滅します(第59条)。しかし、著作者が死亡してしまうと、日記を公表したり、氏名を変えたり、内容を改変することが自由に出来てしまっては問題がありますので、著作者が死亡等により存しなくなった後であっても、仮に著作者が存しているとしたら著作者人格権の侵害となるような行為を行うことを禁じています(第60条)。なお、第60条違反について、一定の遺族は差し止め等の民事的な対抗手段が可能です(第116条)。また、罰則の適用もあります(第120条)。
著作者人格権の一身専属性
「著作者人格権」は、著作者が精神的に傷つけられないようにするための権利であり、創作者としての心情を守るためのものであることから、これを譲渡したり、相続したりすることはできないこととされています (第59条)。