Q.

日本国民の著作物を著作権条約に入っている国で保護する場合、どの国の法律が適用されるのですか。この場合、我が国では違法だが当該外国では適法であるということはあり得るのですか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 内国民待遇 保護期間の相互主義

A.

それぞれの国の法律が適用されます。また、我が国では違法ですが外国では適法であるということはありえます。

著作権の国際条約であるベルヌ条約では、外国人の著作物を保護する場合、自国民に与えている保護と同等以上の保護を与えるという内国民待遇が保護の原則になっており、外国で日本の著作物を利用する場合、原則として当該国の著作権法に従うことになります。また、ベルヌ条約では、保護の水準を決めているものの、各国の著作権法では、その水準の範囲内又はそれを上回る独自の制度を作ることを認めていますので、例えば、ある国でベルヌ条約の保護の水準を上回る制度を作ったときは、当該国では違法だが、他の国では適法ということもありうるわけです。ただし、条約の定めによって、保護期間は相互主義になっていますので、例えば我が国は死後50年まで保護されるのに対し、ドイツは死後70年まで保護されますが、ドイツで日本の著作物を利用する場合は死後50年まで保護すればよいことになります。

用語の説明

内国民待遇
著作権又は著作隣接権関係条約に関する保護の原則の一つで、自国民に与えている保護と同等又はそれ以上の保護を条約加盟国の国民の著作物に与えるということを内容としています。なお、著作権関係条約の内国民待遇は、国内法に規定している権利は条約に規定していなくても外国人に与えるという内容ですが、著作隣接権関係条約では、条約に規定する権利についてのみ内国民待遇を与えるという内容であり、内国民待遇の意味が少し違います。
保護期間の相互主義
国際条約は内国民待遇を原則としていますが、保護期間については、相互主義が認められています。例えば、ある国が死後70年まで保護している場合、我が国は死後50年までしか保護していませんので、当該国では、我が国の著作物を死後50年まで保護すればよいということです。これは、著作物等の本国で権利が消滅しているにもかかわらず、条約国では権利が存在するという弊害を避けるための措置です。なお、我が国は保護期間の相互主義を採用していますが(第58条)、例えば米国のように保護期間の相互主義を採用していない国もあります。