美術館などで、「写真撮影禁止」の張り紙があったり、コンサートで「録音、録画禁止」(機器の持込み禁止)とされていることがありますが、これに従わないと著作権侵害になるのでしょうか。
芸術作品の著作権 | 関連用語: 実演家の録音権・録画権 私的使用のための複製 複製権
著作権侵害にはなりませんが、美術館やコンサートの主催者の了解がないと撮影等はできないと考えられます。
美術作品の写真撮影や演奏会の録音録画は著作物や実演の複製に該当しますが、私的使用のための複製(第30条)は認められており、この規定の範囲内で行われる複製であれば著作権侵害にはなりません。しかし、この場合、主催者は、会場の混乱を避けるため、複製物が商業的な利用をされるのを防止するため、出演者から撮影等の禁止を求められたためなどの様々な理由により、会場管理者としての権限に基づき規制を設けていると考えられますので、一般的には参加者はその指示に従う必要があると考えられます。
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用語の説明
- 実演家の録音権・録画権
- 実演家の録音権・録画権(第91条)の内容は、利用形態に分けて説明すると次のようになります。
(ア)生の実演
自分の「生の実演」を、ディスク、テープ、フィルムなどに録音・録画することに
関する権利です。
(イ)レコードに録音された実演
この権利は、自分の実演が「録音」されたCDなどをコピー(複製)することにも及びま
す。
したがって、音楽CDなどをコピーする場合には、「著作者」である作詞家、作曲家だけ
でなく、歌手や演奏家などの「実演家」の了解も必要となります。
(ウ)映画の著作物に録音・録画された実演
いったん実演家の了解(自らの実演が録音・録画されること)を得て、その実演を映画
の著作物に録音・録画した場合には、原則として、その実演を改めて録音・録画、放送・
有線放送又は送信可能化される(二次利用する)際には、ふたたび実演家の了解を得る
必要はありません(ただし、サントラ盤のように映画の著作物から録音物を作成する場合
は、例外的に権利が働きます)。これは劇場用映画、Vシネマその他の映像作品につい
ては、おおむねこれに該当しますが、実演を放送することについて実演家の了解を得た
放送事業者等が製作した放送番組については、その実演を放送等するために技術的に
必要である場合、録音・録画についての実演家の了解を得なくても、その実演を固定(録
音・録画)することができるという「例外」があるため、放送番組の二次利用等については
改めて実演家の了解を得ることが必要になります。 - 私的使用のための複製
- 著作権の制限規定の一つです(第30条)。
「テレビ番組を録画しておいて後日自分で見る場合」などのように、「家庭内など限られた範囲内で、仕事以外の目的に使用することを目的として、使用する本人が複製する場合」の例外です。インターネットを通じて得た著作物をダウンロードしたりプリントアウトしたりすること(いずれも「複製」に該当する)にも、この例外は適用されます。また、学校の児童生徒などが本人の「学習」のために行う複製(コンピュータ、インターネット等の利用を含む)も、この例外の対象です。
【条件】
ア 家庭内など限られた範囲内で、仕事以外の目的に使用すること
イ 使用する本人が複製すること(指示に従って作業してくれる人に頼むことは可能)
ウ 誰でも使える状態で設置してあるダビング機など(当分の間は、コンビニのコピー機など「文献複写」のみに用いるものは除く)を用いないこと
エ コピーガードを解除して(又は解除されていることを知りつつ)複製するものでないこと
オ 著作権を侵害したインターネット配信と知りながら、音楽や映像をダウンロードするものでないこと
なお、政令(著作権法施行令)で定めるデジタル方式の録音録画機器・媒体を用いてコピー(複製)する場合には、著作権者に「補償金」を支払う必要がありますが、これらの機器・媒体については、販売価格に「補償金」があらかじめ上乗せされていますので、利用者が改めて「補償金」を支払う必要はありません。 - 複製権
- 手書き、印刷、写真撮影、複写、録音、録画、パソコンのハードディスクやサーバーへの蓄積など、どのような方法であれ、著作物を「形のある物に再製する」(コピーする) ことに関する権利で、すべての著作物を対象とする最も基本的な権利です。「生」のものを録音・録画・筆記するようなことも含まれます(第21条)。
なお、脚本等の演劇用の著作物の場合は、それが上演・放送されたものを録音・録画することも、複製に当たります。
また、建築の著作物に関しては、その「図面」に従って建築物を作ることも、複製に当たります (建築に関する図面自体は、「図形の著作物」として保護されます)。