Q.

著作権の二重譲渡があった場合、著作権はどちらが主張できるのでしょうか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 著作権の譲渡 登録制度

A.

契約の前後にかかわらず、一般に先に文化庁(プログラムの著作物の場合は(財)ソフトウエア情報センター)に著作権譲渡の登録をした方が第三者に対抗することができます(第77条)。

著作権の譲渡は一般に契約により行われますが、契約が有効に成立していれば、その時点で著作権は譲渡され、著作権を譲り受けた者は以後著作権者として他人に著作物の利用を許諾することができます。しかし、著作権が二重に譲渡された場合は、誰が真の著作権者がどうかを確定しないと世の中が混乱することになりますので、そのための登録制度が著作権法で用意されています。二重譲渡の恐れがある取引等の場合は、この著作権譲渡の登録をしておいたほうが安心です。

用語の説明

著作権の譲渡
著作者の権利のうち、著作者人格権以外の著作権(財産権)は、契約によって他人に譲り渡すことができます(第61条)。

また、著作権は分割して譲渡することもできます。例えば、複製権などの支分権ごとの譲渡、期間を限定した譲渡、地域を限定した譲渡(米国における著作権)などの方法が考えられます。
なお、全ての著作権を譲り受けたいときは、「全ての著作権を譲渡する」と規定するだけでは不十分です。著作権法では譲渡人の保護規定があり(第61条第2項)、単に著作権を譲渡すると契約しただけでは、二次的著作物の創作権(第27条)及び二次的著作物の利用権(第28条)の権利は権利者に留保されたものと推定されるからです。したがって、著作権を完全に譲り受けるためには、「全ての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」などの文言で契約する必要があります。

また、「ポスター」や広報用の「ビデオ」などの製作を「外注」した場合、著作者となって著作権を持つのは「受注者」となりますので、「発注者」が納品された著作物を自由に利用したいのであれば、発注の時点で「全ての著作権(第27条及び第28条を含む)を発注者に譲渡する」といった契約をしておくことが必要です。
登録制度
著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生し、その取得のためになんら手続を必要としません。この点が、登録することによって初めて権利が発生する「特許権」や「実用新案権」などと異なる点です。

著作権法上の登録制度は、権利取得のためのものではなく、著作物に係る法律事実を公示する、或いは、著作権、出版権又は著作隣接権について、権利の移転、質権の設定等の権利変動があった場合の取引の安全を確保するための制度です。

著作権法では次のような登録制度を設けています。

[1]実名の登録(著作物、第75条)
[2]第一発行(公表)年月日の登録(著作物、第76条)
[3]創作年月日の登録(プログラムの著作物、第76条の2)
[4]著作権又は著作隣接権の移転等の登録(第77条、第104条)
[5]出版権の設定等の登録(法第88条)

登録申請は、文化庁著作権課にて受け付けています。なお、プログラムの著作物については、(財)ソフトウェア情報センター(SOFTIC)にて受け付けています。