新聞社の従業員である記者の作成した記事の大部分は新聞社に著作権があると思われます。著作権法では、[1]法人の発意に基づき[2]従業員が[3]職務上作成し、[4]法人名義で公表される著作物については、[5]就業規則等に従業員を著作者とする定めがない場合は、法人が著作者になる(したがって、著作権も法人が持つ)とされています(第15条。法人著作あるいは職務著作と呼ばれています。なお、プログラムについては[4]の要件は不要とされています。)が、新聞記事の多くはこの規定が適用されるものと思われます。また、記者の記名記事については、記名が著作者表示であるとすれば法人著作の規定の適用はないことになりますが、就業規則等で著作権が新聞社に譲渡されることが定められていれば、新聞社に著作権があることになります。
なお、有識者や読者の署名入りの論文、投稿、座談会記事などの著作権はそれぞれの執筆者または発言者にありますが、投稿規程等に投稿記事の著作権は新聞社に譲渡されるとの規程がある場合や、著作権を新聞社に譲渡するとの契約がある場合は、新聞社に著作権があることになります。さらに、新聞社は新聞全体についても編集著作物の著作権を持ちます。
関連する質問
用語の説明
- 編集著作権
- 詩集、百科事典、新聞、雑誌のような「編集物」は、そこに「部品」として収録されている個々の著作物などとは別に、「全体」としても「編集著作物」として保護されます(第12条)。
したがって、こうしたものの「全体」をコピーするような場合には、「部品」である個々の著作物すべての著作権者の了解を得るとともに、全体(編集著作物)の著作権者の了解も得なければなりません。この「編集著作物」に生じる著作権が、編集著作権です。 - 法人著作
- 著作者になり得るのは、通常、実際の創作活動を行う自然人たる個人ですが、創作活動を行う個人以外が著作者となる場合が法律により定められています。例えば、新聞記者によって書かれた新聞記事や、公務員によって作成された各種の報告書などのように、会社や国の職員などによって著作物が創作された場合などは、その職員が著作者となるのではなく、会社や国が著作者となる場合があります(第15条)。
しかし、会社や国の職員などが創作した著作物のすべてについて、会社や国などが著作者になるわけではありません。
次に掲げる要件をすべて満たす場合に限り、会社や国などが著作者になります。(なお、プログラムの著作物については、公表されない場合も多いため、(d)の要件を満たす必要はありません。)
法人著作の要件
(a) その著作物をつくる「企画」を立てるのが法人 その他の「使用者」(例えば、国や会社など。 以下「法人等」という) であること
(b) 法人等の「業務に従事する者」が創作すること
(c)「職務上」の行為として創作されること
(d)「公表」する場合に「法人等の名義」で公表されるものであること
(e)「契約や就業規則」に「職員を著作者とする」という定めがないこと