Q.

「成果物に関するすべての著作権は依頼主に帰属する」という契約をした場合、受注側は何に利用されても文句は言えないのですか。

 著作権の汎用的な質問  | 関連用語: 氏名表示権 著作者人格権 同一性保持権 二次的著作物の創作権 二次的著作物の利用権

A.

広義の著作権は著作者人格権と財産権としての著作権に分けられますが、著作者人格権は著作者の一身に専属する権利として譲渡ができない権利ですので(第59条)、受注者に残っており、納品した作品を受注者の意に反して改変したり(第20条)、著作者名を勝手に依頼主にしたりすること(第19条)は原則としてできません。また財産権としての著作権のうち、著作物を翻訳、編曲、変形、映画化等などの翻案する権利である二次的著作物の創作権(第27条)と、そうしてできた二次的著作物を利用する権利(第28条)は、それらの権利を含めて譲渡することをはっきり明記して契約しなければ、もとの著作者に残っているものと推定されます(第61条第2項)。契約の文言とは別に、受注側があらゆる利用に同意していたと認められるような事情が無い限り、これらの権利は受注者側に残っていると取り扱われますので、例えば、日本語の作品を翻訳したり、連載漫画を元にアニメを作るような場合は、受注者側の了解が改めて必要になります。

用語の説明

氏名表示権
著作者人格権又は実演家人格権の一つです(第19条、第90条の2)。

著作者人格権の場合は、自分の著作物を公表する時に、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば「実名」(本名)か「変名」(ペンネーム等)かなどを決定できる権利です(第19条)。

ただし、著作物の利用目的や態様に照らして、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、著作者名の表示を省略することができます。例えば、ホテルのロビーでBGMを流している場合に、いちいち作曲者名をアナウンスする必要はありません。

なお、実演家人格権は、平成14(2002)年の改正で創設された権利ですが、氏名表示権の内容については基本的に著作者人格権のそれと同様の権利です。
著作者人格権
著作者の人格的な利益について、法律上の保護を図るものです。著作者人格権は、その性質上、著作者固有の権利として認められるものであり、他人に譲渡することができない「一身専属的な権利(第59条)」とされています。

著作者人格権には、公表権(第18条)、氏名表示権(第19条)、同一性保持権(第20条)がありますが、これらを侵害しない行為であっても、著作者の名誉又は声望を害する方法により著作物を利用する行為は、著作者人格権の侵害とみなされます(第113条第6項)。
同一性保持権
自分の著作物の内容や題号を、自分の意に反して無断で「改変」(変更・切除等)されない権利です(第20条)。

ただし、著作物の性質やその利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる場合は除かれます。例えば、印刷機の性能の問題で色がうまく出ないとか、「歌手の歌が下手」などという場合が、これに当たります。
二次的著作物の創作権
ある著作物(原著作物)を、翻訳したり、編曲したり、映画化したり、表現形式を変更したりする等して創作された著作物を二次的著作物と呼びます(第2条第1項第11号)。このように二次的著作物を創作する権利のことを、二次的著作物の創作権(第27条)といい、原作の著作権者の了解がないと二次的著作物は作れないことになっています。なお、この権利は、翻訳権、編曲権、変形権(例えば平面的な著作物を立体的な著作物にすること)、翻案権(脚色化、映画化等)からなっています。
二次的著作物の利用権
ある著作物(原著作物)を、翻訳したり、編曲したり、映画化したり、表現形式を変更したりする等して創作された著作物を二次的著作物と呼びます(第2条第1項第11号)。

二次的著作物については、これを創作した者が有する権利(著作権)と同一の権利を、原著作物の著作権者も有することになり、これを一般に二次的著作物の利用権と呼んでいます(第28条)。具体的には、日本語で書かれた小説を英語に翻訳し、それを出版する場合は、翻訳者の了解だけでなく、原作者の了解も必要であるということです。